ボクたちはみんな大人になれなかった (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2018年11月28日発売)
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2023.10.3 読了 ☆8.0/10.0


はじめてこういう類の小説を読んだ。私小説。
描かれているこの時代に生きていたけど小さくて覚えてないのに何故かどこか懐かしさを感じる
小沢健二なんて知らないし息してる世界が違い過ぎて心から分かる!とはならなかったけれど、不思議な読後感

眩しいような、その先に見えるシルエットが人なのか猿なのか、なんだかよく分からないような

言葉選びが巧みだなと思う。わからないままでも読み進められる、散りばめられた心に刺さる言葉の数々。

そして読後、なぜかクリープハイプが聴きたくなった。



〜〜〜〜〜〜〜〜心に響いた言葉〜〜〜〜〜〜〜〜


・「ねえ、努力すれば夢って叶うのかな?」
「その質問は、ナポリタンは作れるか?と一緒だと思う。たぶん、手順を踏めば必ず近いものにたどり着くんじゃないかな」
もし手順通りにできたとしても、たとえそれが失敗だとしても、問題はそれを誰と一緒に味わうかなんじゃないかな
たとえハリボテの夢だとしても、人間は背中のリュックに何か入ってないと前に足が進まないように出来ているのだ。荷物は軽い方がいい。だけど手ぶらでは不安すぎるんだ。


・自分がすみかにしている場所以外に、別の顔をして別の自分を演じられる居場所を持つことが人生には必要なんだ


・恋愛とは、から騒ぎだ。つまり中心には何もない。どんなにお手軽な恋愛だろうがどんなに運命的な恋愛だろうが、それは全てから騒ぎだ。つまり答えはひとつ"勝手にしやがれ"


・人生の本当に大切な選択の時、俺たちに自由はないんだよ


・この時代に生まれたいなんて、だれも頼んでないだろう?自分で決められることなんて、今夜の酒の種類くらいなもんだ。


・「むかし、私たちの先人は、限られた文字数で遠くの愛する人にメッセージを送ったのです。たった3文字の言葉で」
「1957年、日本初の南極観測隊が南極に近づいていました。当時、電報は高級なものでした。そこで南極に向かう夫に向かって、妻は短い電報を送りました」
「そしてその妻は、たった3文字の電報に愛のすべてを託したのです。そう、たった3文字で愛を伝えたのです。『ア ナ タ』と」


・国会図書館には日本の出版物が全部あるんだ。文芸誌から漫画にポルノ雑誌まで全部。俺たちがあと50年生きるとして、1日に1冊ずつ読んだところで読みきれない量の出版物がすでにもう保管されているんだ。
そして一方では世界の人口は70億を超えて今日も増え続けている。俺たちがあと50年生きるとして、人類一人ひとりに挨拶する時間も残っていない。今日会えたことは奇跡だと思わない?


・スマホを開いただけで会ったこともない人たちの生存確認ができる時代。知らない方がいいことも親指一つで知れてしまう時代に僕らは生きている。
みんな広い世界を覗いて、片手で収まる窓を開けて満足しようとしている。
それでもみんな「ここにワタシはいる」と瞬いているのが見える。どんなにコミュニケーションが変わってもボクたちは「孤独」が怖いままなんだ。一等星から六等星まで、その光の強さ、大きさはそれぞれ違うけど、もっと速く、もっと深く、本当はみんなひとりぼっちが怖くて、どこかに繋がりたいと叫んでいるように感じた


・日常の嬉しいこと、悲しいことを報告したくなったら、それは恋だ


・美味しいもの、美しいもの、面白いものに出会った時、これを知ったら絶対喜ぶなという人が近くにいることが、幸せだ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月4日
読了日 : 2023年10月4日
本棚登録日 : 2023年10月4日

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