死を超えるもの: 3・11以後の哲学の可能性

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  • 東京大学出版会 (2013年6月4日発売)
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「3・11」の衝撃を受け止めつつ、アーレントの語った「世界への愛」に生きる道を探究する哲学的思考の集成。「原子力時代」に、人間がみずからの世界を作り上げてきた技術の手を自然の内部深く侵入させると同時に、宇宙的な自然力を世界のなかへ引き込むことによって、みずから「破滅への共同存在」と化しつつあるのを見据えながら、「物を労わる」ことをつうじて世界を愛する道を探る思考が、建築保存運動などの実践と結びついている点が感銘深い。ハイデガーの技術論やアーレントの戦争論の解釈は示唆に富む。核を手にした人間は、地球をみずからの絶滅収容所に変えつつあるのだろうか。期せずして、西谷修の「世界内戦」論とも接続されうる視点も見られる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2013年8月7日
読了日 : 2013年8月7日
本棚登録日 : 2013年8月7日

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