ラウィーニア (河出文庫 ル 2-5)

  • 河出書房新社 (2020年9月8日発売)
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本棚登録 : 195
感想 : 17
5

『アエネーイス』を読んでからにしようと思っていたのに我慢できなかった。近いうちに必ず。やはり岩波文庫かな。七五調訳!

トロイアを落ち延びたアエネーアスがイタリアで迎える妻ラウィーニアの物語。『アエネーイス』を下敷きに、一族、ひいては国の祭祀を助ける唯一の子として王のもとで暮らす女性の視点から、ローマ建国以前、ギリシア文化の後継者となる前の土着の信仰風俗などなど、考証と想像を活かして鮮やかに描写している。地に足の着いた生活感が至るところに見えるあたり、とてもこまやかでしかも骨太。
なおかつ大胆だなと思うのは、語り手のラウィーニアが語り手たる動機を自ら語るところ。「私の詩人」ことウェルギリウスは、私ことラウィーニアをろくに語らなかったから……思わず背筋がぞくぞくした。彼女が時空を超越する必然性を明かしたうえで、ほかならぬウェルギリウスの霊と言葉を交わし、こうすることで創作されたフィクションと創作者のいるリアルが響き合うフィクション(=本作)に仕立てているらしい。訳者あとがきで改めて意識された、時おり挟まる現在形の語り、そこから窺えるアエネーアスへの変わらぬ愛が胸に迫る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年12月31日
読了日 : 2020年12月13日
本棚登録日 : 2020年12月31日

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