須永朝彦小説選 (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 山尾悠子 
  • 筑摩書房 (2021年9月13日発売)
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本棚登録 : 264
感想 : 11
4

「聖家族」が文庫で読める喜び。全部『須永朝彦小説全集』で読めるとはいえ、版が異なれば別の本というわけで気になるのは仕方ない。
底本はまさに『須永朝彦小説全集』。底本の誤植をそのまま引き継いでいるのには閉口しちゃう(「天使Ⅱ」の誤植は底本と無関係)。

趣味の横溢せるままの掌短編集。趣味という一点でならどれを引いても外れのない著者の作品群から山尾悠子が選んだもの。美と恐怖。永遠に死を生きる夜のうからの美青年、あるいは彼を称える崇拝者、または彼に迎えられる無垢な青少年という表裏(主客)一体の憧憬を、古風でゆかしい耽美な叙述が支えて美しい。収録作全体のバランスもよく、似た趣向が続く食傷も遠ざけておけるんじゃなかろうか。ただし全集で著者が言っていた「ボロが出るでしょ」は忘れない。
著者にとってものを書くことは、日々の活計としてではなく、美を拝跪し美に耽溺する儀式とでもしたいものだったんだろうなと。それでもって小説は、これまでなかったから自分で書くしかなかったものを書いた、というところでひとつの終着を迎えていたのかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年3月20日
読了日 : 2021年12月26日
本棚登録日 : 2021年12月26日

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