王朝序曲 上 (角川文庫 な 6-4)

著者 :
  • KADOKAWA (1997年2月1日発売)
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感想 : 22
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平安初期の貴族たちのドロドロ人間関係を描く。藤原薬子のことを詳しく知りたいならぜひ。昔の人はもうスケベすぎ!


 桓武天皇は最澄や空海の本を読んだ時に出てきて興味があったのだが、ここまでドロドロの時代を生きた男だったんだな。甘く見ていた。
 この頃人間の下半身の事情がひどすぎて、「人間」という獣って感じがしてよい。殿上人が笑わせる。

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p36 辛酉の年
 桓武天皇が即位した年は、中国の暦で言う辛酉の年だった。この年は革命を司る年とされていて、勢い勇んで天皇に即位したのに、桓武の時代はぼろぼろだった。

p57 早良親王の死は…
 早良親王は桓武によって島流しにあった。その背景には、桓武の子息である安殿親王が次期天皇に付けるようにする世襲問題があった。
 藤原冬嗣の母:永継(ヨウキョウ)と桓武天皇のただならぬ関係の子:安世も私生児ながら皇位継承権を持っている。歳の離れた弟も早良親王と同じような立ち位置に立つとわかった冬嗣は、生まれながら死ぬ運命を背負った弟を可愛いと思いながら複雑な思いだった。

p107 薬子は母のよう
 藤原薬子と安殿親王がただならぬ関係になったのを、永井路子は、安殿の性癖の異常性として描いている。
 安殿の母:藤原乙牟漏は早良親王の祟りで病没したとされている。早くに母を失った安殿は、母の愛に異常な性癖を持った。という設定である。そこで、年上の包容力のある藤原薬子に溺れてしまった。

p133 孤悲
 万葉人は、「恋」を「孤悲」と書いた。シャレ乙。
 離れている者同士が、それに耐えられず身悶えするという、激しい意味を込めている。安殿の薬子を求める気持ちも、恋よりも孤悲である。

p221 桓武という男
 冬嗣の兄:真夏の桓武評、冷酷な帝王・権力欲の権化・人間性への無理解。
 桓武は色々と政策に積極的だった、だから冷徹にならなければいけないところもあったのだろうが、、、そういう人物だったのだろうな。

p225 怨霊の使い方
 早良親王の祟りを実質認めてしまった桓武天皇。これがいけなかった。これ以降怨霊というものが悪用されるようになった。
 荘園の年貢の横領のために、「今年は天候不順で…。祟りのせいでしょうか…。」という言い訳が起つようになったし、陰陽五行の胡散臭い霊媒師が金儲けをできるようになってしまった。それに仏教の坊主も儲けられるようになった。
 日本は長く怨霊信仰から抜けられなかったというが、それは誰かが無くさないようにしていたということである。ここになぜ怨霊信仰が無くならなかったのかの片鱗が見えた気がする。
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 これはマニアックな歴史小説。一般人受けはしない本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2015年1月24日
読了日 : 2015年1月23日
本棚登録日 : 2014年11月21日

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