王妃の館 下 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2004年6月18日発売)
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本棚登録 : 2158
感想 : 200
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ヴェルサイユ宮殿に行く予習として、この下巻は良いと思った。飛行機の中で上下巻読み切れるくらいの本ですし。
 下巻になって良い話になってきた。人生に対して明るい気持ちになれる。ルイ14世の考察が深まる。正統派喜劇だった。


 17世紀のルイ14世の物語がちょくちょく間に挟まるなって思ったら、北白川先生の作品という、そういうメタ構造の小説良いなって思った。

 ルイ14世がどうしてこれほど豪奢な建築物を作ったのか。ヴェルサイユ宮殿はルイ14世の心の陰に対をなす、太陽だったのである。

 フロンドの乱でトラウマを覚えたルイ14世の心の闇を追いやるための、光り輝く「鏡の間」なんて、よくあるんだろうけれど、良い考察だよね。

 シャトー・ドウ・ラ・レーヌに実際にパリで行ってみようとは思わなかったが、次回、二度三度目のパリ旅行で、ディープな旅をするって時に行ってみたいね。


p317 軍司令官コルティッツ
 ヒトラーはパリ撤退に際して、街の破壊を命じた。しかし、ナチスのコルティッツはそれに反抗してパリの街を守った。そのために、パリ防衛のために残されたドイツ軍は戦わずに降伏した。それほどの伝統の力が、パリにはあった。
 こういうの、かっこいいよね。


p322 古きものの良し
 「美しいものをこしらえるのは為政者の実力ですが、それを守り続けるのは市民の実力です。悲しいかな我が国には、どちらの力もないと思った。そればかりか、力ある祖先が築き上げた美しいものを、自然にしろ、造形物にしろ、たかだか利益と便益のために惜しげもなく壊してしまう。」
 こういうのはヨーロッパに旅行に行くと実感できるよね。
 フランスはヒトラーにパリの街を壊されるくらいなら、降伏を選ぶという、プライドを見せた。これスゴイいい話だった。
 

 あとがきの渡辺えり子の文章を好きといってる人がいるけれど、僕は気持ち悪かったです。

 いやぁ、面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年1月5日
読了日 : 2018年1月4日
本棚登録日 : 2018年1月4日

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