三国志 第八巻 (文春文庫 み 19-27)

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  • 文藝春秋 (2012年10月10日発売)
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曹操と劉備、二つの巨星は落ちた。

劉備、関羽、張飛の三義兄弟の死のきっかけは、明らかに関羽の北伐にある。秋の霖雨を利用して関羽が魏に対する北伐を強行し、魏に通じた呉が関羽の背後を襲い、関羽が死に、正気を喪った張飛と劉備が復讐に及ぶも失敗し、結局死に至る。一連の流れは蜀という新興国の統制の無さ、と捉えるのが妥当だと思うが、卑しくも背後を襲った呉に対する憤りを前面に出せば、三国志演義のように見方が変わってくる。

思えば、正史三国志には「桃園の契り」のシーンは出てこない。これが羅漢中の創作なのだとすると、この三人を義兄弟と描いたのは、三人の死に様から得た着想なのではないか、と思ってしまう。

とまれ、後漢末の混乱を駆け抜けて曲りなりにも新秩序を構築しようとしてきた創業者世代は世を去った。三国の相克を乗り越えて平和な治世を取り戻せるのかどうかは、曹丕や諸葛亮など第二世代の力量にかかっている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2015年7月4日
読了日 : 2015年6月21日
本棚登録日 : 2015年6月21日

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