筆者の言う「1ドル=50円」はただの脅しじゃなく、金融政策に絡む重要な主張を含んでいる。しかし、こんな薄い本では語りきれない。実際、最後の方の「全く新しい円の時代」のところなんて、さらっと触れられているだけだ。本書は「基軸通貨史」を振り返りアタマを整理する本として読むのが良いだろう。
政策主張の部分を膨らまして考えるに、筆者の対局に高橋洋一のような金融緩和論者をもってくるとわかりやすい。
高橋洋一はドルとユーロが黄昏(タソガレ)る現状を一種の近隣窮乏化政策と捉え、金融緩和に踏み出さない日本は「自国窮乏化政策」を採っていると批判している。だから円高で一人負けするのだ、ということだろう。
筆者は違う。基軸通貨の黄昏によりウラ基軸通貨たる円に期待が集まっているのだから、そんな時に日本までもが金融緩和に踏み出せば、円キャリートレードを通じて世界に収拾のつかないほどのマネーがばら撒かれる、という主張だ。日本は成熟国になったのだから、いつまでも安い通貨で輸出立国という成功体験に拘ってはいけない、という主張も説得力がある。
日本は世界の一端を支える債権大国、これは事実だ。そして「有事の円」が期待されているのも事実だろう。残念ながら、本書ではだったらどうする、の部分は薄く、地域通貨の話もソリューションじゃないと思う。ソリューションを知るには、筆者のほかのどの本を読めばよいのだろう?
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
経済一般
- 感想投稿日 : 2012年1月7日
- 読了日 : 2012年1月5日
- 本棚登録日 : 2012年1月5日
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