流星ひとつ

著者 :
  • 新潮社 (2013年10月11日発売)
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本棚登録 : 661
感想 : 114
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「愛した方がいいか、愛された方がいいか」
というのは、よく女の子たちが話しているような内容なのだそうだ。

自分がどちらがいいかよく考えてみると
「愛された方がいい」
に落ち着くような気がする。
昔から、考え方というか僕という人間そのものが女性的なところがあると他人の女性から
言われたことがあるが、こういうところがその一旦なのかもしれない。

この本は藤圭子さんが28歳のときに歌手を引退するときのロングインタビューを
そのまま本にした内容で、現在でも活躍する有名人などが実名で登場する生々しい内容になっている。

著者の沢木耕太郎さんが長年未発表になっていた作品を本人が亡くなった今年発表に至ったという
本なので内容も、
「こんなの出して、本人や名前の出てくる人たちに反感など買わないのだろうか?」
とも思える作品である。

藤圭子さんのイメージというと演歌を歌っていたことと無表情で歌っていたこと、
それに自殺したあとの宇多田ヒカルさんがブログで出したコメントから
それなりのイメージがしていたものだが、この本を読むと、そんなイメージではないことがわかる。
少しだけ、そういうのを感じるのはインタビュー中でも出てくる
「別に」という返事で、これは子供が中高生ぐらいのときに親に返事するような言い方で
インタビューの返事としてはちょっと大人げない。
ただ、このインタビューはお酒を飲みながらのインタビューなので少しくだけた感じで、そういう返事もありだったのかもしれない。

「あたしが男になれたなら、あたしは女を捨てないわ、」

これは藤圭子のデビュー曲「新宿の女」の歌詞の一節である。
この一節はよくわからない。
男になっても自分が女であることを捨てたくない。
実は男やっぱり女の方が好きなのかな?

でも、ひとり、誰かが自分の才能を信じてくれているということはとても心強いことなんだよね。彼にとっては、ありがたいことだったんだろうな 224ページ

これは本当にそう思う。
誰かが自分を信頼してくれているという状態があれば、やはり心強い。

「しかし、惚れるだのなんだのっていうのは、筋書きどおり、理屈どおりにはいかないからなあ、実際・・・・・・」「そうなんだよね」「くだらない、駄目な男ほど、女な人にとっては魅力があるものなんだろうし・・・・・・」「そうなんだろうね、たぶん」

このあたりを読んでいる時、感じたのは、
自分を第三者的から客観的に見ると駄目な男、くだらない男なんだろうなと・・・
そうすると、恋愛というか誰かを好きになるということが理屈どおりでないから
自分を好きになってくれる女性もいるんだろうなと。。。。


この本の全体の印象は藤圭子の半生をリアルに見て取れて、
そのときの感情も感じることができる。
沢木耕太郎さんはこの本を実の娘の宇多田ヒカルさんに読んで欲しいと思って出版したそうである。
確かに、彼女が持っている母の姿とこの本に映し出されている28歳の純粋な女性の感情とは
かなりイメージが違うのではないかと思う。

これを読んで彼女はどのように感じたのだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年12月12日
読了日 : 2013年12月7日
本棚登録日 : 2013年11月30日

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