クリスティのポアロ短編集。ヘラクレスの12の偉業になぞらえた、ポアロの事件。
ポアロが充分に活躍するには大きな舞台が必要だ、といったのはクリスティ本人だったか。実際その通りだと思います。ポアロに短編はあまり似合わない。
とはいえ、物語的に言ってヘラクレス(=エルキュール)の物語になぞらえたこのお話は、まとまりがよく、面白いと思う。
クリスティの物語は、イギリスの当たり前を前提にしており、ギリシャ神話への理解というのもその一つ。日本人にはなじみにくいヘラクレスの12の難行について、あらかじめ知っておけばなお楽しめるはず。
なお、クリスティの話にはこの手の話が多い。マザー・グースになぞらえた話(最も有名なのは、ノン・シリーズでもっとも著名な『そして誰もいなくなった』である)、コントラクト・ブリッジを知らなければおよそついていけない『ひらいたトランプ』、クリスマスについてのイギリス的な理解やディケンズの『クリスマス・キャロル』を読んでいなければあまり理解できそうもない『ポアロのクリスマス』など。
『アクロイド殺し』や『オリエント急行の殺人』が人気なのは、斬新で分かりやすいだけではなく、イギリスという文化的背景を共有しなくても分かりやすいからだというのがありそうである。
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カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2008年6月20日
- 本棚登録日 : 2008年6月20日
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