宇宙創成(下) (新潮文庫)

  • 新潮社 (2009年1月28日発売)
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ちょうどこれを読んでいる頃に、TVから録画しておいたウォルター・ルーウィン教授の物理を扱った、MIT白熱教室 特別講義を見終わった。
その最後は、
「この講義で君達は、白色矮星と中性子星のスライドを見た。だから最後にはブラックホールも見たいと思うのは当然のことだ。しかし、ブラックホールからは何も抜け出すことはできないから、写真で撮ることもできない。そこで今回は、白鳥座X-1のドナー星を見せるとしよう。でも、君たちは帰ったら家族や友達にこう言えるだろう。
ある写真を見せてもらった。その隣には、見えないけれど、ブラックホールがあった。
これが知識の素晴らしさだ。例え見えなくても、その存在を知ることができる。」
見ることができない発見された知識の歴史。

・読者は、空間のあらゆる部分が膨張し、銀河はその空間内で静止しているというなら、銀河それ自体も膨張しているのではないかと思われるかもしれない。理論上はそれもひとつの可能性なのだが、実際には、銀河の内部には強い重力が存在するため、銀河の膨張は微々たるものでしかない。
…ウッディ・アレンの映画『アニー・ホール』の冒頭近くにある回想シーンで、シンガー夫人は、なにやらふさぎ込んでいる息子のアルヴィーを精神科医に連れて行く。少年は医者に向かって、宇宙は膨張していると本で読んだが、膨れ上がって破裂したらすべてはおしまいだと話す。すると母親が口を挟んでこう言った。
「宇宙がなんだっていうの?あなたはブルックリンにいるのよ!ブルックリンは膨張してないの!」
シンガー夫人はまったく正しかったのだ。

・科学で耳にするもっとも胸躍る言葉、新発見の先触れとなるその言葉は、「ヘウレーカ(分ったぞ!)」ではなく「へんだぞ…」だ。―アイザック・アシモフ

・われわれが生きるために、十億、百億、それどころか千億の星が死んでいる。われわれの血の中のカルシウム、呼吸をするたびに肺に満ちる酸素―すべては地球が生まれるずっと前に死んだ星たちの炉で作られたものなのだ。―マーカス・チャウン
(星は核融合する際に様々な元素を作り、超新星爆発でそれを宇宙にばらまく。太陽は第三世代の星と推測されている。)

・アレグザンダー・フレミングがペニシリンを発見したのは、窓から飛び込んできた一片の青カビがシャーレに落ちて、培養していた細菌を殺したことに気がついたからだった。それまでにも大勢の細菌学者が、培養していた細菌を青カビに汚染されたことだろう。だが彼らはみな、何百万人もの命を救うことになる抗生物質を発見する代わりに、がっかりしながらシャーレの中身を捨てていたのだ。ウィンストン・チャーチルはかつてこう述べた。「人はときに真理に蹴躓いて転ぶが、ほとんどの者はただ立ち上がり、何もなかったようにさっさと歩き去る。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2014年3月23日
読了日 : 2014年3月23日
本棚登録日 : 2014年3月23日

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