重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2012年5月29日発売)
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・重力の性質を考えると、重いものと軽いものが同時に落ちるのはやはり不思議です。重力は質量が大きいほど強く働きます。したがって、重い物体ほど「地球に引っ張られる力」が強い。もし同じ高さから同時にリンゴとスイカを落とせば、より質量の大きいスイカのほうが地球に強く引っ張られるので、先に着地するように思えます。
ところが実際には、そうはなりません。空気抵抗がない場所では、質量に関係なく、物体は同じ速さで落下します。これは何故でしょうか。
そこで私たちが忘れがちなのは、ものは重いほど「動かしにくい」ということです。
…学校の授業では、動かしにくさを表す質量と、重力の強さを表す重さを区別して教えます。実際、この二つはお互いに何の関係もないように思えます。どちらかが大きくて、リンゴかスイカのどちらが先に落ちてもおかしくはないのです。ところが現実には、なぜかぴったりとキャンセルされるので、同時に落ちる。これについては精密な実験が行われており、現在では10兆分の1の精度で「質量」と「重さ」が一致することが分かっています。では、どうして「動かしにくさ」と「重力の強さ」という二つの効果がぴったりキャンセルされるのか。これについては、ニュートン理論でも説明されていません。このWHYへの答えを出したのが、アルベルト・アインシュタインでした。

・病を得てからは短命かもしれないと知り、生きることには価値があって、自分には成し遂げたい事がたくさんあることを悟った。―スティーブン・ホーキング

・LHC<欧州合同原子核研究 機関(CERN)の世界最大級加速器(Large Hadron Collider)>の1京倍のエネルギーを実現する加速器を考えてみる。LHCと同じ技術を使うとすると、その加速器は銀河の厚みと同程度の半径です。そのエネルギーで加速した粒子の波長は、<1億×10億×10億×10億>分の1メートル。10ナノ・ナノ・ナノ・ナノメートルになります。そして、この波長の粒子が衝突した際に生まれるブラックホールのシュワルツシルト半径は、<1億×10億×10億×10億>分の1メートル。加速器の分解能とブラックホールの大きさが同程度になるので、「技術的に不可能」なのではなく、「原理的に不可能」。物理学では、原理的にすら観測できないものは「ない」のと同じであると考えます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2013年6月14日
読了日 : 2013年6月14日
本棚登録日 : 2013年6月14日

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