詩人・伊藤比呂美氏が居住地であるカリフォルニアと、九十歳を超える父上が暮らす熊本を往復しながら介護を全うした日々の記録を綴る。
カリフォルニアでは老犬の介護に当たりながら、歳が離れたアメリカ人夫の世話に手を焼く。
(こちらも、ほぼ介護…)
今ではご両親とご主人を見送って再び日本に拠点を移されたが、変わらず動物達と植物に囲まれる日々である。
つくづく、「世話を焼く」人生だと思う。
この方の書くものは毎度、生々しい人間の営みを突き付ける。
殊に本書。
介護をすると言う事は、排泄や嫌悪を無しに語れはしないのだ。
九十を超えた父上の孤独な叫びにこちらも心を刻まれながら、一方で詩人・伊藤比呂美を創った人は間違いなくこの方だ!と確信を強くした。
父上の漏らす悲痛な呟きが、詩として成立している点に気付くのだ。
しかも驚く程、魂に語り掛ける詩である。
それにしても自棄的になりながら、死を恐れて尚冷静さを欠く父上の姿はリアルであった。
「人一人、私にとってはすごく意味のあった人が一人いなくなって」
か…。
果てに、『父の生きる』。
何とも良いタイトルである。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2022年5月26日
- 読了日 : 2022年5月19日
- 本棚登録日 : 2022年4月23日
みんなの感想をみる