未来をつくる言葉: わかりあえなさをつなぐために

  • 新潮社 (2020年1月22日発売)
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最近、研究者の中に、何をやっているのか、専門は何なんのか、よくわからない人が増えてきた。彼らは、人類学、哲学、科学、工学、医学、それらを行ったり来たりする。社会が既存の学問体系ではカバーできないほど複雑になっている今、今後の学問のあり方を体現している人たちだ。私にとって、本書の著者のドミニク・チェンさんもそういう学者の一人。
本書は、注目の若手学者ドミニク・チェンがコミュニケーションについて、自身の半生と絡めて論考したものだ。私たちは完全にわかりあえることはできないという前提に立つことからコミュニケーションは始まる。それでもあえて共に在るために、という言葉は力を与えてくれる。子どもの誕生からたどり着く著者の結論は温かい。子どものいない私のような者でも共感を覚えた。
しかし、一般向けのエッセイのような装いながら、これがなかなかに高度で、難しい。読者は本書を読むことで、著者の思考過程をトレースする。もちろん、チャレンジするだけの価値はある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月15日
読了日 : 2020年3月15日
本棚登録日 : 2020年3月9日

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