八咫烏シリーズの第二弾。前作を読み終えて、続きはどうなるのかなと思ってたら、作者の阿部さんは安易に物語を進める方向を採らず、物語をより深める方向を選んだ。そう思ってみると、確かに前作では回収されていない謎がいくつか残っている。
前作では常に物語の中心に居ながら、最後まで姿を見せなかった若宮。自らの后選びの期間、彼は何をしていたのか、なぜ后候補たちの前に姿を見せることがなかったのかが本作では語られることになる。そして、前作で大失態をやらかした若き近習の雪哉の名誉が大いに挽回される物語でもある。イジられキャラの雪哉とオレ様キャラの若宮の掛け合いが実にいい。
解説によれば、裏表のような前作と本作は、本来ひとつの物語であったという。また編集者はインタビューで、著者の阿部さんの頭には八咫烏の世界が現実にあるかのようだと語っている。それは現実社会では、私たちの知らないところで様々なことが起きているように、若宮や雪哉の行動の影で文章になっていない瑣末なことや人物もすべて阿部さんの頭の中にはあるということでもある。そして、それが物語に深みを与えている。
本書も前作と同じく、謎解きの楽しみも味わえる。そして、前作では残された謎も、今作で新たに生まれた謎もまだまだある。続きが気になる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年12月22日
- 読了日 : 2020年12月21日
- 本棚登録日 : 2020年12月21日
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