ある補充兵の戦い (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2010年8月20日発売)
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感想 : 6

所収の「捉まるまで」は読んでいたが、今回改めて読んでみてまた違う印象を持った。なぜ米兵を撃たなかったのか?というくだりはこの中でも有名なところだと思うが、その時の自分(大岡氏)の意識の見つめ方として、相手(米兵)の印象によって、自分の感情なり認識が形作られていく、とでもいうのか、こう書いてしまうとそりゃそうだろうという感じもするのだけれど、自身が最近、柄谷行人「トランスクリティーク」を読んだり、カントなんかについて考えることがあったので、その辺で考えたことと結びつけたくなる感じがした。大岡昇平、柄谷行人、カントあたりを並べてちょっと整理してみたい。

大岡昇平はスタンダールに傾倒しているところから、人間の心理について巧みに書ける作家、のように思われているところがあると思うが、ここにある一つ一つを読んで、そこで書けることの限界についても感じていたのではないかと勝手な思いを巡らしたりしている。「レイテ戦記」はまだ未読なのだが、事実のみを淡々と書き連ねたもの、と何かで読んでいて、そのスタイルが、「結局のところ自分の言いたいことを言おうと思えば、こういう風に書くしかない」という思いに至った末の産物ではないのかと今のところ思っている。

「レイテ戦記」もいずれ読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・戦後~内向の世代
感想投稿日 : 2011年6月18日
読了日 : 2011年6月14日
本棚登録日 : 2011年6月18日

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