(038)日 (百年文庫)

  • ポプラ社 (2010年10月12日発売)
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感想 : 12

百年文庫18冊目は「日」

収録は
尾崎一雄「華燭の日」「痩せた雄雞」
高見順「草のいのちを」
ラム「年金生活者」「古陶器」

「痩せた雄雞」を会社の昼休み中に読んでいて、うっかり泣きそうになった(いや少し泣いていた)。素晴らしかった。続けて2回読んだ。

今日に至るまでの心の動きを、今現在目に入るもの、耳に聞こえてくるものと絡ませて語っていく。ほとんど何も起こらない静かな小説で、でしゃばることがない文章なのに、とても力強く感じる。小説の結ばれ方もよい。「華燭の日」の電車に取り残された花束に緒方がもの思うところなども、ありがちな雰囲気に見えてどこか余韻を残す。嫁に行く娘を見ながら語られる、緒方自身の心境についてもはっとするようなところがあった。

今年は阿部昭に続きいい収穫をしたようだ。日本の私小説は素晴らしい。

3人とも初めて読む作家で、高見順とラムもいいと思ったのだけど尾崎一雄の印象が強く、ここは間を空けていずれまたじっくりと読み返そうと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アンソロジー
感想投稿日 : 2013年4月8日
読了日 : 2013年4月8日
本棚登録日 : 2013年4月8日

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