カーテン 7部構成の小説論

  • 集英社 (2005年10月26日発売)
3.76
  • (5)
  • (13)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 104
感想 : 11
5

現在もフランスに亡命中のチェコ人作家ミラン・クンデラによる文芸批評書。

何回も読み返したが、今また一年ぶりに読み返しています。

ミラン・クンデラ氏は筋金入りの小説家。
小説というものに人生をかけた人ゆえに書ける、現代において生きることの意味が詰め込まれています。また、「小説」というものが生きる上でのツールである事、つまり「小説」はめまぐるしく変化し、巨大な世の中を可視的にするために唯一無二のツールである事が、本書で実感できます。

見えていないものを見るには、まず言語による認識を構築し、メンテナンスする事が大切で、それは生きる上でのリスク管理であると思います。クンデラ氏の筆致は、読む人の五感を研ぎ澄まし啓発する力があります。そして、認識する為には「無駄なものを一切剥ぎ取り、事物に魂に向かっていく」事が肝要である。心にメモしておきたい言葉が本書のページをめくるごとに溢れ出してきます。

よって本書は、文芸批評という形式を取っていますが、応用度は深いです。
チェコという社会体制がそっくり入れ替わる歴史がある国で、共産主義と資本主義ふたつを経験してる人というのは、そうざらにはいません。「現代では、それまで動いていないと思っていた足元の地面が実は動いていた」といった言葉は特にハッとさせられました。

不景気な世の中で心を強くできる本です。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸批評
感想投稿日 : 2008年11月23日
本棚登録日 : 2008年11月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする