ブラック企業ビジネス (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版 (2013年11月13日発売)
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「ブラック企業は単なる違法企業の問題ではなく、国家全体を揺るがす社会問題」とする前書(http://mediamarker.net/u/wishmountain/?asin=4166608878)から更にその背景に迫った本。

ブラック企業の背後には「ブラック士業」の存在がある。社労士、弁護士である「ブラック士業」は"内容証明、訴訟をちらつかせた脅し"や"法制度の攪乱"を用いて、ブラック企業社会に暗躍し、報酬をせしめる。

違法行為が明白であっても、辞めれば訴えるなど脅し、時には裁判を長引かせ、被告である労働者が疲弊し根負けするのを狙っている。いわばブラック企業の用心棒である。ブラック士業の目的は脅すこと自体にあり、費用を費やした人海戦術などで会社に火を認めさせることを諦めさせ、そもそも裁判までもちこませない。

残業代の未払いは刑事罰の違法行為。事項で民事的な支払い義務が消滅することと、この行為の違法性は全く別の事柄。会社側には労務時間を管理する義務があり、「承認」していないは(労裁的には)通じない。

ブラック士業は思想で動いているのではない。あくまでも企業からの報酬を目当てにしている。だから、労働者側にもつくことがあるし、動きすぎて法規制が強まっても(ブラック士業にとって)都合が悪いので、世の潮流を見て動く。


ブラック企業が社会問題となった背景には、人材の「使い潰し」があり、これを支える行政がある。この周辺お社会システム問題との関係を明確にする必要がある。

ブラック企業は大きく分けると以下のふたつがあげられるだろう。
1)法制度の形骸化 ― 社労士の技術的限界
2)生産性の低下 ― 法制度の運用予測可能性の低下し、労働者の意欲も低下する。経営者の低外信をいたずらに煽る結果にもつながる。


ブラック企業問題に真摯に取り組み、実際のエピソードも交えながら(ワタミとファーストリディングに訴訟を起こされ、圧力をかけられているほど)実践的に話を展開している点は大いに評価されるべきだろう。しかし、ロジックの展開が少し乱暴であったり、根拠の羅列の整合性が取れていなかったりと、少々読みにくい文章ではある。

しかしながら、標題で掲げている問題に意識がある人は一読に値するだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月20日
読了日 : 2014年1月24日
本棚登録日 : 2018年11月20日

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