ポワロの事件簿 1 (創元推理文庫 105-6)

  • 東京創元社 (1980年10月17日発売)
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感想 : 18
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ロンドンに居を構えるベルギー人の名探偵ポワロと、その友人ヘイスティングズの元に持ち込まれた事件の顛末を語ったミステリー短篇集。

ポワロ物ははじめてなので、この探偵がお洒落で言葉遊びの好きなコミュニケーション能力の高い人物として書かれているのをようやく知った。映像化ではポワロは人を苛立たせるキャラクターとされていることが多いけど(実際ヘイスティングズはイラついてるけど)、こういう先回りして自画自賛しておいて必要以上に持ち上げられないよう振舞ってる人は好き。あと一般に「感情的」と表現されそうなタイプの女性の話を聞くのが上手で、結論を急がずに情報を聞き出す方法が身についている。
ポワロの相棒であり、語り部であるヘイスティングズも、地の文で言わずもがななミスリードをしたり、ポワロに無駄な質問をすることが少ないので、引き立て役の助手にありがちな脚を引っ張る感じがない。美女に弱く、お人好しですぐ依頼者の言い分を100%信じてしまうが、愚か者だという印象にはならないバランス。自信満々にヘイスティングズをおちょくるポワロと、毎度悔しがりながらもポワロを認めているヘイスティングズの関係は微笑ましい。
推理小説としては人の入れ替わり、成り替わりのトリックが多用されており、クリスティは役者の演技に信頼を置きすぎなんじゃないかと思うものの、最初期の作品「戦勝舞踏会事件」からそうした要素が盛り込まれていることからして、演劇性というのはポワロの重要なテーマなのかもしれない。真犯人たちはポワロに演技の技量を批評され、ポワロは時折、良い芝居をした犯人のことを泳がせてしまいもする。
1と2を続けて読んだが、最初期の作品が2のほうに入っていたりして編集意図がよくわからない。1のほうが面白かった。特にポワロ自身の口で失敗談を語る「チョコレートの箱」は、ヘイスティングズとまた違うポワロの語りに茶目っ気がある。探偵には人嫌いとそうでないのがいるけど、ポワロは後者の代表格だなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年4月15日
読了日 : 2020年3月10日
本棚登録日 : 2020年4月15日

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