デザイン偉人伝

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  • 左右社 (2020年10月7日発売)
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感想 : 6
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今では当たり前のものになっているデザインが普及するきっかけとなった人物にスポットを当て、グラフィックを中心に〈デザイン〉という概念ができあがってくる歴史の背景を追う。


最初に登場するのは15世紀イタリアの出版社オーナー、アルド・マヌーツィオ。ピコ・デラ・ミランドラの家庭教師だった彼は、既存の出版物に飽き足らず自ら印刷所を設立。現在の文庫本に通じるような持ち運びサイズの本を普及させ、ページ毎にふるノンブルをデフォルト化した。また、ドイツのブラックレター体よりも読みやすいローマン体を開発。斜体のイタリック体も彼の印刷所が生み出した。ブックデザイナー松田行正が書く偉人伝の最初の一人にふさわしい人選と言える。
20世紀の偉人たちのなかでとりわけ面白いのはやっぱりデュシャン。パリのキュビストグループから締め出され、失意のままNYへ向かったデュシャンは、そこでパリにはありふれているがNYにはないもの、逆にNYでは当たり前だがヨーロッパでは珍しいものや概念を発見し、面白がった。これが〈レディメイド〉の誕生に繋がる視点となった。デュシャンはアウトサイダーの目を持ち、それが彼独自のセンスとして花開いたのだ。現代から見て憧れの人物に見えるのも、コミュニティに対する帰属意識の薄さがコスモポリタンの理想形のように思えるからだろう。
内容は面白く、ブックデザイナーとしての矜持溢れる文章も素敵なのだが、相変わらずこの人の本は孫引きが多すぎて気になってしまう。出典はちゃんと書かれていて孫引きだとわかるだけマシなのかもしれないが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2021年10月24日
読了日 : 2021年10月5日
本棚登録日 : 2021年10月24日

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