すごい物理学講義

  • 河出書房新社 (2017年5月22日発売)
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「すごい物理学講義」Carlo Rovelli

科学とは、思考の在り方を絶えず探求していく営み。

観察と理性を適切な方法で用いること。批判的な思考を正しく用いれば、我々は世界に対する自らの視点を絶えず修正できる。

物質は原子から構成されているという原子仮説は1905年になってようやく決定的な証拠がもたらされた。

今日の私たちが知っている全ての事柄も、まだ私たちが知らない事柄と比較すればおおまかであるに違いない。

色とは光を形作る電磁気の波の振動数(振動速度)、もし波がより早く振動すれば青くなり、遅く振動すれば赤くなる。

速度とは相対的な概念。物体それ自体の速度は存在しない。

時空間には、ある事象を起点とした過去と未来の総体に加え、過去でも未来でもない時間の総体が含まれており、その時間は一瞬という点ではなく、ある程度の長さを持っている。

現在という時間の薄片が空間全体に広がっているのではなく、時間と空間はひとつの構造体として互いに影響を与えあっている。

標高が高い場所では時間が速く過ぎ、低い場所では遅く過ぎる。

光にはエネルギーを伝達する機能がある。物に光を当てると熱くなるのはその一例。

光を当てれば電気が流れる光電効果が発生するのは光の振動数が高い時だけ。この現象が生じるか否かは光の強度(エネルギー)よりも光の色(振動数)に左右される。

誰かが理解した後に理解するのは簡単。難しいのは物事を最初に理解すること。

量子力学が発見した三側面
・粒性
ある物理学的な系の中に存在する情報の量は有限であり、それはプランク定数hによって限定される。
・不確実性
未来は過去から一意的に導き出されるのではない。極めて厳密な規則に従っているように見える事柄も、現実には統計的な結果にすぎない。
・相関性
自然界のあらゆる事象は相互作用。ある系における全事象は別の系との関係のもとに発生する。

量子場を形成する個々の粒子は別のなにかと相互作用を起こす時だけある一点に居場所を定め、その姿をあらわにする。ひとたび相互作用を終えるなり、粒子は「確率の雲」の中に溶け込んでいく。世界とは、素粒子が起こす事象の湧出。波のように振動する、大きく躍動的な空間の海に素粒子は浸かっている。

世界は屈折した時空間であるという一般相対性理論は、量子化された場(量子場)を想定していない。一方量子力学は、世界は平らな時空間であり、離散的なエネルギーを持つ量子がその中を飛び交っているとする。これらを矛盾なく統合した理論の一つがループ理論。

我々はつぶれたりよじれたりする巨大な軟体動物の中に浸かっている。

物理的な空間も場である以上は量子からできている。量子重力場。

ループ理論を使えば、空間は粒状の原子構造を持っている事を方程式に翻訳し、数学的に正確な方法で表現できる。空間の量子的な構造を記述し、正確な寸法を計算できる。

空間は空間の量子から形成され、離散的な構造を備えている。

世界の基礎を形作る実体は、空間や時間の中に存在しているのではなく、それら自身が互いに関係を築きながら空間と時間を織りなしている。

私たちの宇宙の先に存在しているかもしれないものを理論的に探究する事。

物理学は新しいデータが利用できるようになった時だけ進歩するのではない。

正しい理論に向かって正しい道を進むためには兆候が必要。

ループ量子重力理論が示唆している空間の量子化や時間の消失という極端な概念上の帰結は、20世紀の二大理論を真剣に検討し、そこから結論を導き出そうとした帰結。

未来へのタイムトラベルは理論的には容易。宇宙船に乗ってブラックホールの近くまで行き、そこでしばらくの時間を過ごしてからブラックホールを後にするだけ。ブラックホールの地平線では時間が止まるので、そこの数分は他の場所の数百万年でもおかしくない。

重力場の微視的な振動がブラックホールの地平線の正確な位置を決定する。地平線は高温の物体のように振動している。

量子重力理論によれば、ブラックホールの中心では事物を反発させる巨大な圧力が発生する。それは崩壊する宇宙が反発して膨張する宇宙へ移行するのと同じ状況。

この世界にあらゆる無限は存在しない。最小の情報(量子力学)、最短の長さ(量子重力理論)、最大の速度(特殊相対性理論)という自然単位がある。

世界は原子の総体の間に認められる相関性の網であり、物理的な系によってやりとりされる情報の網でもある。

紅茶が冷めるのは、紅茶の持っていたエネルギーの一部が周りの空気に移動したから。

情報とは「起こりうる選択肢の数」の事。

エントロピーとは欠けている情報、つまりマイナスの符号がついた情報。エントロピーの総量は増大する事しかないが、それは情報の総量は減少する事しかしないから。

公理1 あらゆる物理的な系において、有意な情報の量は有限である。(粒性)
公理2 ある物理的な系からは、つねに新しい情報を得る事が可能である。(不確定性)
有意な情報とは、過去に我々がある系と相互作用を起こした結果として、私たちがその系について所有する事になった情報。その情報は、未来に我々が同じ系と相互作用を起こした時、我々がいかなる影響を被るか予見する事を可能にする。量子力学の世界において、ある系と相互作用を与え合うとき、我々は何かを得るばかりでなく、同時にその系に関する情報の一部を消去している。

ある環境の中で存続していく為の最も効果的な方法は、外部の世界と適切な相関関係を築く事。情報を収集し、蓄積し、伝達し、改良する能力に長けた生命体ほど存続していける可能性が高い。

自分たちの見解に疑いをもてる人間だけがその見解から自由になりより多くを学ぶ事ができる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 物理
感想投稿日 : 2018年2月13日
読了日 : 2018年2月13日
本棚登録日 : 2017年11月7日

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