ブラックミステリーズ 12の黒い謎をめぐる219の質問 (角川文庫)

  • KADOKAWA/角川書店 (2015年4月25日発売)
3.48
  • (4)
  • (16)
  • (15)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 145
感想 : 16
3

〇 概要
 「熱烈なキスを交わした結果,二人は二度と出会えなくなった」,「のろまを見捨てたため,彼女の出費は倍増した」など12の謎めいたシチュエーションの真相を,イエスとノーでこたえられる質問だけで真相を当てる…というゲームを行う4人の男女。推理カードゲーム「ブラックストーリーズ」を小説化した作品

〇 総合評価 ★★★☆☆
 非常に短いブラックなストーリーが12本書かれた作品。どこかで聞いたことがあるような話もあって,とても読みやすい。ただ,内容は非常に薄く,読んでいるときはそこそこ楽しいけど,後には何も残らない…ポテトチップスのような作品。★3で。


〇 サプライズ ★★★☆☆
 作品全体に,「初対面」という問題の出題として,「運転手」が,実際に起こした誘拐事件の告白をしたという仕掛けが用意されている。ほかにも,「投資家」は,「ロンドン塔の少女」で,「詩人」は,「子ども殺し」で,それぞれ自らの体験を告白し,「船長」は「消えた拳銃」で,自分の部下の話を告白している。それほど大きなサプライズではなく,味付け程度。★3で。

〇 熱中度 ★★★☆☆
 非常に短く,そして興味深くブラックな話が読めるので,読みやすい。読むのが止まらないという作品ではないが,最後までさらっと読める,読みやすさがある。電車の中で1つずつ読んでもよいかも。★3で。

〇 インパクト ★★☆☆☆
 個々の作品は,そこそこブラックなんだけど,「消えた拳銃」など古典といってもいいようなトリック。ほかの作品も,読んでいるときは,そこそこ楽しめたけど,後に残らない。インパクトは薄いなぁ…。★2。  

〇 読後感 ★★★★☆
 「運転手」が誘拐犯であり,その罪を告白するという展開は,やや読後感が悪い。個々の作品も,全部ブラックな作品なので,トータルで見て,読後感は悪い。こういう作風は結構好き。★4で。

〇 キャラクター ★☆☆☆☆
 「運転手」,「詩人」,「船長」,「投資家」はいずれもキャラクターとして弱い。「シスター」も,超常的な存在っぽく描かれているが薄い。総じて,キャラクターの魅力はない。ゲーム的な作品なので,人間が書けてないのは仕方ないところか。

〇 希少価値 ★★★☆☆
 ゲーム的な内容の作品であり,ブラックミステリーズというゲームの紹介的な内容なので,再販などもなさそう。いずれは手に入らなくなる作品だと思う。★3で。

〇 トリックなどのノート
〇 プロローグ(出題者:シスター)
 拳を握りしめたまま,男は道ばたで溺死した。
→ 漢は排水溝に落とし物をした。体は路上にあるまま,頭だけ排水溝に突っ込んだ。排水溝に詰まり,手を伸ばして落とし物をつかんだが,抜け出せなかった。やがて,雨で排水溝の水嵩が増して,溺死した。
〇 一生分の一分間(出題者:運転手)
 熱烈なキスを交わした結果,二人は二度と出会えなくなった。
→恋人と交わしたキスによって,彼は一本遅い電車に乗ることになった。その電車が事故を起こしたせいで,彼は命を落とした。
〇 のろま(出題者:詩人)
 のろまを見捨てたため,彼女の出費は倍増した。
→彼女はバスで試験会場を目指していた。だが,渋滞に巻き込まれ,仕方なく降車し,徒歩で目的地に向かい始めた。やがて渋滞は緩和され,先ほどのバスが隣を通りかかった。彼女はしぶしぶ二度目の運賃を支払い,同じ車両に乗り込んだ。
〇 消えた拳銃(出題者:船長)
 ある男が頭を打ち抜かれて放牧地で死んでいた。拳銃は離れた小屋で見つかった。
→男は拳銃に長いテープをくくり付け,その端を離れた山羊小屋に垂らした。男が自殺をした後,山羊が紙テープを食べ,拳銃を引き寄せた。やがて紙はなくなり,拳銃は小屋に転がった。
〇 満杯の絶望(出題者:運転手)
 倉庫にたくさんの食料が残されていたため,島は地獄になった。
→船は無人島に旅行客を運んだが,積荷を下ろさずに出航した。食料もないまま無人島に残された客たちは,地獄のような時間を過ごした。
〇 渾身のジャンプ(出題者:投資家)
 タイミングを厳密に図り,彼は渾身の垂直飛びを行った。60センチをジャンプして,直後に死んだ。
→男はケーブルが切れて落下するエレベーターに乗っていた。彼は,着地の瞬間にジャンプすれば助かるという都市伝説に賭けてみた。だが,むろんそんなことはあり得なかった。男はちょうど60センチ飛び上がり,直後に死んだ。
〇 いつまでも赤(出題者:運転手)
 赤,赤,赤。どこまでも続く赤に絶望して,男は死亡した。
→ルーレットで,男は黒に賭け続けた。だが何度繰り返しても,どこまでも赤が続いた。全ての金を使いきった彼は,絶望して,死んだ。
〇 やましい三人(出題者:詩人)
 心にやましさを抱えた三人が,並んだ箱に入っている。
→下着泥棒が女子更衣室をあさっていたところ,外から足音が聞こえてきた。あわててロッカーに隠れた直後,入ってきた男女が過剰な愛情表現を始めた。さらに外から足音が聞こえ,男女もロッカーに飛び込んだ。女子更衣室に入ってきた別の女性は,人の気配に首をかしげた。その背後では,やましい男女が息をひそめている。
〇 ロンドン塔の少女(出題者:投資家)
 少女はロンドン塔の前で,「はい」と答えた。男はテムズ川に身を投げることにした。
→男は莫大な借金を背負っていた。貸主は,返却期限の延長を賭けで決めようと持ち掛けた。観光客の東洋人女性の国籍を質問し,どう答えるかを賭けた。彼女は日本人であり,男は賭けに負け,破産した。
〇 子ども殺し(出題者:詩人)
 男は自由と引き換えに,自分の子供を殺した。
→男は逃亡中の凶悪犯だった。顔を整形し,なにも知らない女と結婚し,子供を作り,幸せに暮らしていた。だが子供は整形前の男とそっくりに育った。このままでは警察にしっぽをつかまれると考え,男は自分の子供を処分した。
〇 列車の指跡(出題者:シスター)
 たびたび人身事故を起こすその列車は,整備工場に戻るたび,一直線に並んだ指の跡が見つかる。
→列車が事故を起こした。切断された指が隙間に入り込み,見逃された。その指は列車用の洗車機ブラシにかきだされ,そのままはまりこんだ。列車が洗車機で洗われるたびに,回転するブラシについていた指が跡を付けていた。
〇 死はすばらしい(出題者:船長)
 少女は死んだ。そしてとても喜んだ。
→少女は過保護な両親に地下室に閉じ込められて育った。「外に出ると死ぬ」と言い聞かされ,それを信じて疑わなかった。彼女は地下室を抜け出て,初めて外の世界を見た。彼女は死んだのだと思い,死後の世界はなんと自由なのだろうと喜んだ。
〇 初対面(出題者:運転手)
 計画は予定どおりに完了した。最後に被害者の顔をみて,誘拐犯は絶望した。
→女は殺してしまった子供の死体を処理するために,嘘の狂言誘拐を計画した。仲間に引き込んだ実行犯に金を渡すふりをして,子供の死体を押しつけた。それは予定通りに進行し,実行犯の手元には,死体だけが残った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 処分
感想投稿日 : 2017年2月19日
読了日 : 2017年2月19日
本棚登録日 : 2017年2月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする