文化祭オクロック (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社 (2012年11月11日発売)
3.54
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本棚登録 : 198
感想 : 13
3

 東天高校の文化祭を舞台とした青春ミステリ。青春ミステリといっても,ミステリとしての側面は弱めで,この作品の主たる謎は,「DJネガポジ」の正体は誰か?という部分である。
 青春ミステリの「青春」の側面は,盛りだくさんである。野球部の元エースである山則之の斉藤優里への恋心,自分の投げたボールで壊れた大時計を改めて動かそうというチャレンジ,東天高校の文化祭の各種イベント,そしてこれらを盛り上げるDJネガポジによるラジオ放送…。すっかりおっさんになってしまった社会人にとっては,完全なるフィクションの世界として,気楽に楽しむことができた。こういう作品を,高校生時代に読んでいると,作品に登場する主人公,ヒロインと自分との境遇の差に凹んでしまうんだろうけど…。
 しかし,完全に爽やかな作品という訳ではなく,やや重いテーマが裏には存在している。
 DJネガポジの正体は,心の病と体の病により,学校を病欠している放送部の青石という少年。DJネガポジと放送部のメンバーは,文化祭一日目で大時計を動かすというイベントを成功させた。そして,二日目は,何らかのカタチでの復讐を計画していたという。その計画を見抜いたのは,この作品の探偵役を務めた古浦久美子という地味な少女
 最後は,少女の脅迫により,復讐はしないと約束するところで終わる。文化祭の二日目は描かれないが,これは描かずに楽しい文化祭の様子を想像させるのが狙いだろう。
 古き良き時代のアニメや漫画のような雰囲気の作品だが,最近ではこういう作品はライトノベルに多いのだろうか。ミステリ的な弱さはマイナスだが,作品の雰囲気は好み。登場するキャラクターも魅力的なので,★3としたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 処分
感想投稿日 : 2016年6月12日
読了日 : 2016年6月12日
本棚登録日 : 2016年6月12日

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