山田風太郎明治小説全集 (12) (ちくま文庫 や 22-12)

著者 :
  • 筑摩書房 (1997年10月23日発売)
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感想 : 19
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「明治バベルの塔」
ひとからひとへと伝えられる言葉。そこには秘められた想いが、言外の意味がこめられている。――黒岩涙香、幸徳秋水、そして田中正造。彼らが明治期に実際に残したそんな言葉が今、天才山田風太郎によって再び命を吹きこまれる。

「牢屋の坊ちゃん」
東京から松山へ赴任中の英語教師・夏目金之助。一方、李鴻章を襲って下関から釧路へ移送中の重刑囚・小山六之助。このふたりが神戸駅の雑踏ですれちがった次の瞬間、――小山六之助は『坊ちゃん』のパスティーシュの世界に解放される。

「いろは大王の火葬場」
恐るべきは明治時代の強烈すぎる怪人たち、すなわち福地桜痴、岸田吟香、そして”いろは大王”こと木村荘平。……いやそれにしてもこれ、ほんとに実際あったことなのか!?

「四分割秋水伝」
”上半身の秋水”………大逆事件を背景にした幸徳秋水を描く。「私は数年内に、病気で死なねば刑罰で死ぬ運命、と十分に覚悟しております」。
”下半身の秋水”………幸徳秋水の女性に対する驚くべきクズっぷりを描く。――結婚式当日の夜に吉原にいる秋水を見かけた新聞社の同僚が、なぜこんなところにいるんだと訊くと――「口直しにきたんだ」。
”背中の秋水”………幸徳秋水とその薄幸の母を描く。「許してくれ。もう浮世に心残りはみじんもない。(親)不孝の罪だけで、僕は万死に値するのだ。」
”大脳旧皮質の秋水”………幸徳秋水の運命をかくあらしめたその原動力を描く。「秋水はひっきょう須賀子の狂的情熱に抱擁せられ、心身ともに焚き尽くされしなり」
”ふたたび上半身の秋水”………絞首刑になんなんとする幸徳秋水がいたった境地を描く。「病死と横死と刑死を問わず、死すべきときのひとたび来らば、充分の安心と満足とをもってこれに就きたいと思う。今やすなわちその時である。これ私の運命である」。そして辞世の句「爆弾の飛ぶよと見てし初夢は 千代田の松の雪折れの音」

「明治暗黒星」
伊庭八郎………戊辰戦争で左手を切断されながらも戦いぬき、時を移さず函館戦争に参戦、そこで戦死した伝説の剣客。
伊庭想太郎………そんな伝説の剣客を兄に持つ伊庭家の次男(八郎死してのちは伊庭家当主)。かつ、空前絶後のカン違い野郎。
星亨………一般男性。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー・サスペンス
感想投稿日 : 2023年1月13日
読了日 : 2023年1月13日
本棚登録日 : 2023年1月13日

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