人形愛/秘儀/甦りの家 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (2015年9月11日発売)
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本棚登録 : 47
感想 : 9
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高橋たか子 1932年(昭和7年)- 2013年(平成25年) 夫は作家の高橋和巳。(Wiki情報)不勉強につき初めて知る作家でした。さすが講談社文芸文庫らしいマニアックなチョイス。面白かったです。収録されているのは類似テーマの3作品(息子のような十代の美少年とアラフォー女性の謎めいた関係)。

個人的には最初の短編「人形愛」が一番好みに合いました。短編ゆえ余計な思想が最小限で創作物として完成度も高かった気がする。夢に出てきた蝋人形の美少年を「玉男」と名付け、夢のなかで愛撫を繰り返すうちに、現実の世界にも玉男そっくりの美少年が現れる。薔薇の咲き誇る庭、かつて夢見ていた理想の未来図、ラストでメビウスの輪がくるん、と繋がるように裏表が一体になる感覚が鮮やかでハッとさせられた。

「秘儀」あたりから少し難解になり、ルドルフ・シュタイナーのテオゾフィー(神智学)だの、ちょっと神秘主義思想が匂わされてくるのだけれど、廃屋と、またしても少年を模した蝋人形など、ゴシックな雰囲気が楽しめるのでまだ許容範囲。こちらの美少年は「澄生」で、最初主人公と母子かと思ったら、どうも違うらしい。謎めいた部分が多いけれど、西洋のゴシックホラー的に読めば面白いと思う。

「甦りの家」はプロローグ含めて3部構成、3作の中ではかなり長めで、その分小説としての面白さより作者自身の思想の主張が露骨になってきてちょっと興を削がれる。こちらもやはり息子のような年齢の美少年「雪生」を愛人?にしているアラフォー女性(どうやって生活してるのか、どこで彼と出会ったのかなどの説明は皆無)が主人公で、かといって官能恋愛小説ではけしてなく、主人公はせっせと自分の神秘主義的思想に少年を洗脳しようと、あれこれおかしなことを吹き込んでいる。彼女の言ってることはそれなりにわかるし興味深くはあるのだけれど、無垢の少年に対して支配的にふるまい、粘着質につきまとってる感じがちょっと気持ち悪くなってきて、苦手でした。

全体的に、植物的な官能、というような表現で統一されているので文章自体はとても好き。他の作品も読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  >た行
感想投稿日 : 2015年9月23日
読了日 : 2015年9月22日
本棚登録日 : 2015年9月17日

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