川端康成異相短篇集 (中公文庫 か 30-7)

  • 中央公論新社 (2022年6月22日発売)
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感想 : 20
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タイトル通り、川端康成の異色作品を集めた短編集。川端康成は、有名な「伊豆の踊子」や「雪国」は実は読んでない(読んだけど忘れてる可能性もある)けれど、「眠れる美女」や「片腕」「たんぽぽ」などの変な作品はとても好きなので、この作品集もとても好みだった。

既読のものでは「地獄」がやはり好き。ほとんど掌編のようだけれど飼い主が死んだら犬が殉死しなくてはならない村の話「犬」もすごいインパクト。何十年も前に会ったという女性にとうとうと当時のことを語られるも全く記憶にない作家の「弓浦市」も奇妙な味わい。

「毛眼鏡の歌」になると、自分を振った女性の残していった櫛やごみ箱から抜け毛を集めてそれで眼鏡を編む男という、いささか変態じみたフェティシズムになり、とはいえ妙に詩的なので笑うに笑えない。

「朝雲」は、美しい女教師に憧れる女学生の独白で、川端康成はこの手の百合ものも好きですよね。

「死体紹介人」は奇抜なアイデアが面白い反面、「多分恋人もなくつつましく暮らしていた娘が、死体となって初めて、白い解剖台の上で、若い男達に女としての媚びを現した」という部分などに現れている、女性を勝手にモノ化した表現が個人的には不愉快だった。編者の高原英里はこれを「実に美しく忌わしい」と書いているけれども。男性目線だと思う。まあこれが「眠れる美女」に繋がっていくというのはわかる。死んだ(眠った)抵抗しない女はそりゃモノでしょうよ。そしてそれが川端のフェティッシュなのでしょう。

※収録
心中/白い満月/地獄/故郷/離合/冬の曲/朝雲/死体紹介人/蛇/犬/赤い喪服/毛眼鏡の歌/弓浦市/めずらしい人/無言/たまゆら/感情/二黒/眠り薬

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  >か行
感想投稿日 : 2022年10月8日
読了日 : 2022年10月7日
本棚登録日 : 2022年10月6日

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