ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

  • 早川書房 (2014年9月5日発売)
3.66
  • (34)
  • (32)
  • (59)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 519
感想 : 39
3

13年前の「来訪」と呼ばれる、地球外生命体からの接触により、危険区域として隔離されている6カ所の「ゾーン」。そのうちの一つハーモントにあるゾーンの研究所で働くレドリック・シュハルト(通称レッド)は、表向きは正式な職員として専門の研究者を案内しゾーンに入ることもあるが、裏ではゾーンに不法侵入し、異星人が残していったものを持ち出し闇で売りさばく案内人=ストーカーでもある。ストーカー仲間は何人もゾーン内で命を落としており、取り締まりで逮捕されたりもするが、それでも彼らはその仕事をやめようとしない。

序盤のレドリックはまだ若く独身だが、何度もゾーンへ潜入し逮捕されて刑務所に入ったり、美人の奥さんグータと結婚して可愛い娘が生まれたりしつつ、やはりストーカーを続けて30歳を超え、最終章でついに、まだ噂だけで誰も持ち出したことのない「黄金の玉(なんでも願い事をかなえてくれるという「願望機」)」までたどり着くが・・・。

タルコフスキーの映画(https://booklog.jp/item/1/B00006RTTS)は昔観ました。ゾーンとストーカーの設定は同じだけれど、映画は小説の最終章の「願望機」にまつわる部分だけをクローズアップ解釈して、ゾーン=願い事の叶う場所にしてあったんですね。タルコフスキーは多分ソラリス同様、「願望が叶う」という部分にだけ反応したんだろうな。そして映画のラストシーンで、突然女の子が超能力を使う場面が、全くちんぷんかんぷんだったのだけど、こちらは原作を読んで納得。ラストだけとってつけたように原作設定に忠実だったようで(苦笑)

さて観念的だったタルコフスキーの映画と違い、こちらの原作はなんというかちゃんとSF。映画に合わせて改題してあるけれど本来のタイトルは『路傍のピクニック』で、その意味がわかる部分がちょっと鳥肌でした。ファーストコンタクトものSFでありながら、肝心の地球外生命体は一度も姿を見せず、ただ「ゾーン」という「痕跡」を残していったのみ。もしかして彼らにとって地球人なんて虫程度の存在で、とるにたらない地球という星にゴミを捨てて行っただけかもしれない。そのゴミを人類は拾い集めて意味を見つけようとし、実は間違った使い方をしていても気づいていないだけかも。なんて、皮肉な。

最終的にその黄金の玉とやらに本当に願いを叶える力があるのかどうかはわからない。異星人は神のように人類を試そうとしているのかもしれないし、いろんな解釈が可能だけれど、真相がどうこうよりは、こういうことが起こったときに人はどうするか、という人間ドラマのほうが主軸なんだろう。レドリックはろくでなしの密売人だけど、人間的には根底の部分で正直で善良だ。「なんでも望みが叶う」なら人は何を願うのか、人類代表としてそこに辿り着いたレドリックの人間性を信じるしかない。いろいろ考えさせられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★ロシア・東欧 他
感想投稿日 : 2019年9月18日
読了日 : 2019年9月17日
本棚登録日 : 2019年9月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする