瀧夜叉 (文春文庫 み 13-5)

著者 :
  • 文藝春秋 (1998年4月1日発売)
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本棚登録 : 131
感想 : 18
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タイトルから単純に滝夜叉姫(平将門の娘とされてるけど基本的には架空の人物で怨霊キャラ。国芳の骸骨の浮世絵が有名)の話だと思い、のわりに、肝心の夜叉の扱いがイマイチだし、その夜叉という魅力的な女性キャラがいるにも関わらず、におわせどころか露骨なBL展開に仰天しつつ最後まで読んで、やっとそういうことかと納得。「瀧夜叉」とは夜叉個人を差してるわけではなかったんですね。

平安中期、平将門の乱とその後の一門の行く末を描いてはいるけれど、実質主人公は美少年・蘆屋道摩(道満)。彼の能力を利用しようとする興世王、ライバルなのに一目惚れしちゃう賀茂保憲(なんかもう変態すぎて滑稽というかいっそ気の毒)、幼馴染で名前の通り美丈夫?の美丈丸などが、道摩とBLワールドを繰り広げます(違)

道摩のキャラクターは面白かったけど、この道摩が執着する美丈丸のほうが、なんとなくイケメンでなんとなく逞しくてかっこいいっぽい、という以外、とくに魅力的な人物に思えなかったので、ちょっと共感度はイマイチでした。単に幼馴染、というだけで二人が惹かれあうための具体的なエピソードがなかったからだと思う。

その他、良い子だけどやたらと泣き虫で根性なしな少年時代の安倍晴明、政略結婚とはいえ夜叉の夫でありながらいつまでも夢見がちで流され体質の九郎など、男性キャラクターの魅力がイマイチ。女性陣(如月尼と夜叉の姉妹)はそれなりに魅力的だったけれど、いかんせんあんまり活躍しなかったからなあ。伏線回収された終盤の盛り上げは面白かったですが、視点が絞りきれなかったので全体的には少し散漫だったかも。

含みを持たせた終わり方だったけれど、「瀧夜叉」たちがアジトにしてるのが大江山なあたり、続きがあるとしたら源頼光による鬼退治だろうな・・・

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ○皆川博子
感想投稿日 : 2015年8月20日
読了日 : 2015年8月19日
本棚登録日 : 2015年8月17日

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