1920年代のドイツを舞台に、6人の人物のそれぞれの視点で語られる連作短編集・・・と思いきや、実はある人物による小説内小説だったという複雑な構成で、語られる時間も少しずつズレているせいで、まるで複雑怪奇な迷路に迷いこんだよう。でもそれが物語が進むにつれて徐々に解れてゆく感じがなんともいえず読書の醍醐味を味あわせてくれます。濃密で贅沢。
実際の歴史(戦争)を背景にしながらも、熱帯植物園や蝋人形館、沼のイメージ、麻薬に溺れる青年詩人、そして美しい少年士官、と紡がれるイメージはゴシックにして耽美。
結局は、一人の女性が演出した、壮大な愛の告白劇だったのかもしれないけれど、登場人物が皆魅力的で、操り人形のように運命の糸にたぐりよせられ踊らされる彼らの、人間ドラマに惹きつけられます。
読書状況:読み終わった
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○皆川博子
- 感想投稿日 : 2014年2月3日
- 読了日 : 2014年2月2日
- 本棚登録日 : 2014年1月29日
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