還暦間近かの女医陽子のところに届いた病歴要約は彼女の先輩医師黒田のものだった。それを送ってくるのは彼女の元で研修医をしていた桑原。陽子の人生と黒田の人生、そして桑原や陽子の若き後輩女医だった佐野の今が淡々と、でも繊細なタッチで描かれている。おもな登場人物はこれだけであるが生きていく重さみたいなものが粛々と伝わってくる気がした。それは決して暗いものではない。深いというか・・・。医療現場の医者の目線(著者は医師)の文章はいろいろな病気の話、治療の話など書かれているけれど小難しいものでなくそういうものなのかと腹に入るような、小説として充分堪能しながら読めた。
人生の終末期、よい言葉がみつからないけど、ジタバタすることなく(そういう環境になったとしても)美しく終えたいと思う。
陽子と佐野の会話で「大草原の小さな家」の話が出てくる。そうそうそなのよね、と懐かしく思いました。
著者の「エチオピアからの手紙」が同じ主人公の若い時のものとのこと。読みたい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
南木佳士
- 感想投稿日 : 2013年5月27日
- 読了日 : 2013年5月27日
- 本棚登録日 : 2013年5月27日
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