蜩ノ記

著者 :
  • 祥伝社 (2011年10月26日発売)
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藩主の側室との不義密通を疑われ、刃傷沙汰まで起こした侍・秋谷がいた。彼に残された時間は十年。その間に藩史をまとめ、そして切腹せよ、と沙汰が下されて七年。同じく刃傷沙汰を起こした若い侍庄三郎は秋谷の藩史編纂事業を見届けよ、との命をうける。そして彼は秋谷のもとへ向かった。
彼の娘と息子、妻、そして村の人々との触れ合いを通し、そして何よりも清廉とした秋谷に影響を受け、庄三郎は秋谷の無実を信じ、彼を助けたいという思いを抱くが――。不作にあえぐ民と締め付ける代官。また家老からの圧力――。全てが絡み合った先には――。

これを読んで藤沢周平の「蝉しぐれ」を思い出したのはわたしだけじゃないと思うんだけど、どうだろう。題名からして、連想されるものがある。
いやもう、物語の清廉とした雰囲気とラストのあの盛り上がりで、感動するなと言う方が無理ムリ! 家老のニヒルな悪役っぷりに秘められた真実を知った瞬間、もうなんという人だ、と脳内をいろんなシーンがよぎった。秋谷の背負うものの重さに、打ちひしがれた…! そしてラストはもうひたすら感動的。「彼」の一気に大人びた姿が眼に浮かんで、それに涙。
うんうん。驚くほどまっすぐでとても描写が美しい、全ての要素が混然一体となってドラマチックで感動的な物語を成していた。とても美しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Others
感想投稿日 : 2012年8月27日
読了日 : 2012年8月12日
本棚登録日 : 2012年8月12日

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