駅名学入門 (中公新書ラクレ 682)

著者 :
  • 中央公論新社 (2020年3月6日発売)
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感想 : 11
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地図や地名に造詣の深い著者による一冊で、鉄道駅の命名を通じて、歴史ある地名の継承、また消失にまで論を展開しています。

全国津々浦々の駅の命名に関する傾向を紐解きつつ、自治体名や町名としては消失してしまったが、駅名として残り、その結果、地域の名称として現代に継承されているケース、また逆のケースなど、駅名が地域の名称に与える影響の大きさについて考察された内容となっています。

また、高輪ゲートウェイをはじめとするカタカナ交じりの駅名や○○台、○○が丘といった憧れの高級住宅街的名称が、古くからある歴史的地名に優先してしまう現状について警鐘を鳴らしています。

このあたりの図式は地名においても駅名においても非常に類似したものがあると思います。それゆえ、著者の主張も地名に対するそれと同じ構図であり一貫したものとなっています。

駅の命名は私企業によるものであり、商業的な戦略などさまざまな事情を踏まえた結果ですから、尊重すべきものではありますが、これが行き過ぎた結果となり、古くから言い伝えられてきた由緒ある名称がなくなり、駅名も町名も味気ないものばかりになってしまうとすれば、大変さみしいものといえるでしょう。

事実、京都の街を旅する時に目にする、古風な町名やバス停名にあこがれてしまうこともあるわけでして…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月19日
読了日 : 2020年8月17日
本棚登録日 : 2020年8月16日

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