トマス・ペイン「Common Sense コモンセンス―アメリカを生んだ「過激な聖書」」(佐藤健志訳)を読む。
もともとアメリカの歴史にあまり興味はなかったのだが、独立の背景となる本書を読んで、目からウロコが落ちた!と云えるかも知れない。この「コモンセンス」、アメリカとイギリスが武力紛争に突入した1年後に発行され、発刊より3か月で12万部とも1年で50万部とも云われる。当時の新大陸アメリカの人口が250万人だったのを思えば、まさに空前の大ヒット。この書によってアメリカの民衆がイギリスからの独立へ決起したと云っても過言ではないのだろう。まさに歴史を作った一冊と云うことになる。
しがないイギリスの職人が新大陸に渡って雑誌編集者となり、そこで才能が開花して本書が出来上がる。本来イギリス人でありながら、イギリスのジョージ3世を痛烈に罵倒し、新大陸の民衆を独立に向けて扇動するという背景には、当時のイギリスの事情、混乱もあったのに違いない。新大陸こそは、自由・平等のまったく新しい国家を樹立するに相応しいとの主張は、世界に普遍の国家を樹立することでもあったわけで、それ故に人々の共鳴を読んだのだろう。直後に出された独立宣言とも軌を一つにするものと云える。
思えば、その時の思想は現在のアメリカに脈々と生きていると云ってもよい。世界に普遍の国家を作るとの考えは、かつてのイラクにせよ今のイスラム国にせよ、それらに対処する際の指針でもあったわけで、そういう意味では今なお、アメリカと云う国は純粋とも云えるのかも知れない。本書の日本訳は少し踊り過ぎているきらいはあるものの、色々と示唆に富んだ本と云えそうだ。
- 感想投稿日 : 2015年2月12日
- 読了日 : 2014年11月17日
- 本棚登録日 : 2014年11月18日
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