真保裕一でもこういう作品を書くんだ。というのが第一印象。内容はさすが真保裕一という感じで、幾つもの伏線が最後に見事に一本の太い幹になっている。特に終盤に登場する半田良作のサイドストーリーが、涙腺を刺激する駄目押しとなっている。
確かにかつてデパートは子供にとって夢の場所だった。オシャレをして出掛け、上層階のレストランで小さな国旗が立てられたお子様ランチやホットケーキを食べるのが楽しくて仕方なかった。食券というのも新鮮だったし、その食券をウェイトレスのお姉さんが器用に片手で半券をちぎるのを真似たりもした。レストランの眼下には開通したばかりの新幹線が行き交い、屋上に上がれば遊園地まであった。
この様な昭和30〜40年代に掛けてのデパートに対する愛情をふんだんに感じる作品でもある。その後老舗百貨店の凋落もいくつかニュースになったことも思い起こさせる。
きっと作者自身もデパートに輝きを取り戻して欲しいと思っているに違いない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2012年8月15日
- 読了日 : 2012年8月15日
- 本棚登録日 : 2012年8月15日
みんなの感想をみる