原発は不良債権である (岩波ブックレット)

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  • 岩波書店 (2012年5月10日発売)
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昨年(2011)あれほど節電と騒いだのですが、今年は昨年より暑いような気がしますが節電の運動は今年は低調のようですね。昨日(8/3)のお昼頃の電力需要量は90%に達していなかったので、原発なしでも十分に電力が賄える事実が浮き彫りになってきているようです。

一般家庭まで電気料金の値上げが決まったようですが、その本当の理由は何なのでしょうか。節電のせいで電力使用量(売上高)が減少して利益がでなくなったのではと思ってしまうこともあります。

このブックレットは、日本の発電は今後どのように取り組むべきかについて金子氏が解説しています。そろそろ原発に代わる新しいエネルギーに対して取り組む時期がきていると、この本を読んで感じました。

以下は気になったポイントです。

・燃料費の上昇が赤字の原因と言われているが、原子力発電所をもたない沖縄電力が減益とはいえ、黒字を出している(p3)

・総括原価主義の下では、電力会社は燃料費が上昇しても、その分が三か月ごとに計算させて、申請すると電力料金に上乗せ可能、燃料調整額という形で経済産業省令ひとつで自動的に料金が引き上げられた(p4)

・燃料費値上げで問題になるのは、建前上「自由化」されている企業など大口利用者分のみ(p4)

・2003.11に電力の一部自由化によって、日本卸売電力取引所が設立されたが、送配電を監視する電力系統利用協議会も、取引所も大手電力会社の出身者で占められていて、接続料を高くして電力売買を妨げてきた(p6)

・原発再稼働を急ぐ理由は、1つには、地域独占と総括原価主義という既得権益を守るため、2つには、夏に原発が動かないで電力が足りてしまうと、電力会社が困ってしまうから(p7)

・ストレステストはシミュレーションに基づくもの、シミュレーションは普通の人には分かりにくいうえに、仮定の数値を少し変えるだけで、かなり違った結果が出せる(p10)

・原発が不良債権化すると、原発からの収益に依存する電力会社ほど経営が悪化する、東京・関西・九州電力がそうなる(p14)

・原発稼働がなく、電気料金の値上げがない場合には、2020年までに必要とする額は8.84兆億円となる(p14)

・東電が値上げするのは、燃料費上昇というよりも、当面の債務超過を避けるため、事故の処理費用を利用者に負担させるもの(p16)

・東京電力の責任回避と賠償費用を削減するために、数十年と続けてきた安全基準をいとも簡単に緩和した(p17)

・原発の廃炉費用は1基あたり600億円が積立てられているが、第1第2の合計10基をあわせても、廃炉費用(1.2兆円)には足りない、残りは自己資本から調達する必要あり(p20)

・高速増殖炉もんじゅは、2010.5に再開(1995.12漏えい事故により停止)したもの、再び事故を起こして停止、いままでに1兆円使ったが何も生み出していない、冷却費用は年間200億円(p22)

・高レベル放射性廃棄物は高知県東洋町で受け入れ予定となったが、その町長がリコールされて白紙撤回、現在は3万トン近くが原発の建屋内、敷地内に置かれたまま(p23)

・六ヶ所村の再処理施設に対して、電力会社が債務保証や出資をしているので、それを運営する日本原燃がつぶれると、電力会社も潰れてしまう(p31)

2012年8月4日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 環境・エネルギー・気候・学術
感想投稿日 : 2012年8月4日
読了日 : 2012年8月4日
本棚登録日 : 2012年8月4日

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