大震災の後で人生について語るということ

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  • 講談社 (2011年7月30日発売)
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以前、ラジオ講座で「やさしいビジネス英語」のビニエットで取り上げられていたのですが、アメリカ人は911語に考え方が変わった人が多いというものでしたが、日本人は今年(2011年)の3月11日に起きた地震を境にして考え方が変わった人がいるかもしれません。

資産運用の指針を書いた本を今までに何冊か執筆されてきた橘氏が、前半で日本人の人生設計を変えた4つの神話について簡単なバランスシートを用いて解説をしています、さらに後半では、ポスト311の人生設計として、どのような資産を強化していくべきかについて、アドバイスとしています。

年齢によって、あとどの程度働けるかは違ってくるので、人的資本と金融資本のバランスを年齢とともに見直す重要性が説かれていました。

また、個人的には気が進まないのですが、最後に述べていた通り、1)定年制を法律で禁止、2)同一労働同一賃金を法律で制定、3)解雇自由を一定額の金額を支払うことを条件に整理解雇を認める(p215)という大改革はやらなければ日本の活力は衰える一方なのでしょう。

以下は気になったポイントです。

・「ブラックスワン」の本において、黒い鳥の特徴として、1)異常、2)大きな衝撃、3)異常であるにもかかわらず、起こってからは適当な説明により予測可能だったとしてしまう、としている(p19)

・1997年にも巨大な黒い鳥と出会っている、97年7月にタイバーツ大暴落、東南アジアの通貨危機、韓国、インドネシアでの危機、日本では金融機関(三洋、拓殖、山一証券)破たん、ロシア危機、2銀行(長銀、債銀)の破たん(p29)

・BS貯金箱の右側にはお金の入り口が2つついていて、下の投入口には自分のお金(資本金)、上の投入口には他人からの借りた金(負債)をいれる(p35)

・資産の運用利回りが10%なら、資本金500円では50円の利益だが、500円の負債を加えると利益は100円に増えて、資本金に対する利回りは20%になる、これをレバレッジと呼ぶ(p36)

・資本主義とは、複利とレバレッジによってバランスシートを拡張していく運動のこと(p37)

・帰属家賃とは、マイホームとは自分で自分に家賃を払うこととする、時価5000万円のマイホームを所有しているとして、賃貸に出せば月額20万円の家賃収入があるとすれば、これが帰属家賃と考える(p40)

・頭金1000万円で住宅ローン4000万円で年間家賃が250万円の場合と、レバレッジを5倍掛けた金融商品の保有(証拠金1000万円、負債4000万円)により5%の運用利益があるのとバランスシートは同じことになる(p44)

・経済学的には、持ち家と賃貸の違いは、不動産投資のリスクを引き受けるかどうかにある(p45)

・マイホーム取得ではなく、秘密は、値上がりし続ける中での「レバレッジ」にある、バブル崩壊後は、不動産リスクが顕在化したので、投資リスクの異なる持ち家と家賃を比較する「まやかし」が登場した(p49)

・賃貸する側から見れば、常識とは逆に、家賃と市場価格から考える利回りで考えると、家賃の安いワンルームマンションほど不利、賃料の高い大型物件を大家族で借りると得である(p52)

・現在日本の労働環境に起きている大きな変化とは、1)リストラによりサラリーマン実数の減少、賃上げ凍結、ボーナス削減、福利厚生廃止、サービス残業の状態化による実質賃金の低下、2)ベンチャーや外資系企業の台頭による転職チャンスの発生(p76)

・超低金利でも、デフレ経済ならば、実質金利はプラスであり、物価が下がる分だけお金の実質的な価値は増えていく(p100)

・私たちの人的資本は一定年齢を超えるとゼロになる、それ以降は金融資本だけで生きていくことになる(p111)

・個人の寿命は国家よりもずっと短いので、国家から受け取ったお金を(税金などで)返済する前に死んでしまい、結果的にお金をもらったのと同じことになる、これが国債発行が人気を集める理由(p114)

・日本国の歳出は、国債費と地方交付税を除けばその半分が社会保障費、したがって年金制度を廃止するか、健康保険・介護保険を民営化すれば、将来債務も大幅に減少する(p125)

・国家破産とは、1)高金利、2)円安、3)インフレ、が同時に、かつ異常なレベルで発生すること(p127)

・日本人の4つの神話とは、1)不動産は上昇しつづける、2)会社はつぶれない、3)円は安全な資産、4)国家は破産しない、であった(p132)

・バザールは開かれた空間で、店をたたむのも出すのも自由、伽藍は物理的・心理的に閉じ込められている空間、バザールと伽藍は「評判」めぐってまったく異なるゲームが行われている(p139)

・劇団役者よりも映画俳優が儲かるのは、映画は拡張可能だが、演劇は拡張不可能だからである(p146)

・アメリカの企業が成果主義なのは、スペシャリストを評価する方法がそれしかないから、自分の稼ぎが反映されるのは当たり前でそれ以外の方法では給料が決められない、日本企業は「成果主義」を導入する際に、バックオフィスの仕事も含めたために何を成果にして良いかわからなくなった(p154)

・知識社会で高く評価されるのは、言語的および論理数学的知能のみ、音楽的知能や身体運動的知能は飛びぬけて秀でていないと市場価値は無い(p158)

・今後の資産運用としては、商品を対象としたETF(上場MSCI世界株)など(p177)

2011/8/7作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 資産運用・保全
感想投稿日 : 2011年8月7日
読了日 : 2011年8月7日
本棚登録日 : 2011年8月7日

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