エリヤフ・ゴールドラット 何が、会社の目的を妨げるのか

制作 : ダイヤモンド社 
  • ダイヤモンド社 (2013年2月22日発売)
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2001年にゴールドラット氏が、ついに日本語への翻訳を許可したというニュースがあり、中小企業診断士の資格を取得して間もない私は、第1作目である「ゴール」を貪るように読んだ記憶があります。

工場において各工程の生産効率を上げようとしても、生産性には寄与しないという考え方には、目からウロコでした。それに対する解決策(ドラムバッファー理論)が生まれた背景についても、この本では詳しく解説されています。

2年程前に亡くなられたと聞いていましたが、この本は、その息子さんによって書かれたもので、主として第1作の「ゴール」からの抽出が多いように思いましたが、ゴールドラット氏の著作やインタビュー等を引用とそれに解説を加えた形で本が構成されています。

彼の本を殆ど読んだ私にとっては、改めて彼が強調しようとしたポイントが短時間に再確認できて良かったです。

以下は気になったポイントです。

・日本企業への恐怖心が無くなったのは、JITやTQMといった日本的経営手法が、欧米の企業で導入されてギャップがなくなった1995年前後であった(p5)

・トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏への尊敬の念が揺らぐことはない、物理学など自然科学の手法を人間組織に適用しようと閃いたことがポイント(p7)

・TOCが生産分野のみに導入されたら、工場労働者を中心にリストラが横行する可能性がある、これは著者の願いと正反対のこと(p13)

・TPS(トヨタ生産方式)は、安定した環境が大前提、1)製品寿命の安定性、2)需要の安定性、3)受注の安定性、が必要(p44)

・最も重要な著作は、「ザ・チョイス」、ものごとはシンプル・人は善良である、という二つの新年からTOC理論が成り立っている(p51)

・ほとんどの問題の原因は、人々が持っている誤った仮定、つまり思い込みのせいである、思ったような成果が出なかった時、人のせいにするのではなく「人はもともと善良である」という前提で思い込みを探してみる(p53、55)

・TOCの真髄を一言で言うなら、集中である、やらないことを決めるのがTOCでいうところの集中(p57)

・一般の人が失敗と考えることを、むしろ学びを得られる絶好の機会ととらえ、ものごとを改善していくのが科学者の姿勢、愚か者は自分の失敗に学ばない、才人な自分の失敗に学ぶ、しかし賢人は他の人の失敗からも学ぶ(p62)

・博士が亡くなる数字前に残した言葉(プロセス):1)巨人を見つける、2)巨人が取り組まなかった大きな領域を発見、3)巨人の肩の上に立つ、4)前提条件の違いを見出す、5)間違った仮定を見出す、6)核心の問題、解決策などを究明する十分な分析をする(p105)

・障害を乗り越える4ポイント、1)ものごとはシンプルである、2)人は善良である、3)Win-winは常に可能、4)わかっていると決して言わない(p111)

・フォードは在庫の滞留スペースを制限することで、ライン上に問題がある場合、どの部分がフローの妨げになっているかを発見しやすくした(p142)

・かんばん方式では、仕掛品の生産量を制限するのに、スペースを制限するのではなく、数量自体を制限した(p145)

・かんばん方式は生産現場に、いつ作ってはいけないかを示す、つまり、過剰生産を防ぐための実用的なメカニズムであった(p146)

・従来の段取りを見直し、その方法を買えれば段取りに要する時間を劇的に減らすことができると主張、トヨタでは、段取り時間がほんの数分まで大きく短縮された、現在のリーン生産は、小バッチと段取り時間短縮の技法と強く結びつける(p149)

・プロセスラインや、カンバン方式を用いている企業を除き、ほとんどすべての生産オペレーションにおいては、1つのバッチ処理に要する時間は、そのリードタイムのほんの10%程度である(p162)

・ボトルネックはビートを刻む「ドラム」に相当し、「タイムバッファ」は納期から作業の投入日を割出し、さらに作業の投入を抑える行動は、注文と作業投入を結びつける「ロープ」の役割を果たす(p177)

・大野は局所的なコストを無視したことで、限界コストの引き下げに成功した、部分的な効率を追求しなかったことで、労働生産性を向上させた(p192)

・フォードと大野が目指したものの共通点は、1)流れを改善(リードタイム短縮)、2)いつ生産しないかのオペレーション、3)流れをバランスさせるプロセス、4)部分的な効率は犠牲にする(p193)

・効率が上がることと、生産性があがる、ことは別モノであるが、この二つの言葉を混同して使うきらいがある(p199)

・工場を動かすための作業ルールを可能にした指標として、スループット・在庫・業務費用、とした(p205)

・ボトルネックは現実として存在するもの、それを無視せずに、いかに活用するかが大切、存在を認識してこれに集中した管理することが大事(p213)

・リソースの能力を1つずつ切り離して別々に測っても意味がない(p214)

・コスト会計とスループット会計との一番の違いは、製造間接費の扱いである、コスト会計では、製造間接費を1つひとつの製品に配賦するので、多く作るほど原価は安くなるが、スループット会計では、原材料などの真の変動費のみを考慮する(p247)

・評価尺度には、時間と金額の両方が考慮されるべき、在庫の金額と在庫が工場に置かれている日数をかけて計算する(p258)

2013年3月3日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2013年3月3日
読了日 : 2013年3月2日
本棚登録日 : 2013年3月2日

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