虫がいない 鳥がいない

  • 高文研 (2012年12月27日発売)
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ハチミツを使うのは個人的にはホットケーキしか思いつきませんが、数年前にハチミツの生産が減少しているというニュースを聞いたことがあります。この本によれば異変が起き始めたのは 2008年から(p11)だそうです。

ハチミツ生産が減少しているのはミツバチが巣に帰ってこなくなるからで、原因は農薬が疑わしいようですが、以前、四大公害病の原因特定に時間がかかったように、公式な見解は今のところ無いようです。ミツバチがいなくなると、最終的には受粉が行われなくなり、果物や野菜が生産できなくなることになり、最悪の場合、食糧危機にまで発展する可能性もあるようです。

この本は、ミツバチに対する農薬の影響を報告しているものです。現在の農薬は進歩したようで、種や葉に浸透することで効果を持続させているようです。最もショックだったのは、売られている種には農薬が染み込ませてあり、危ないので食用が禁止されているそうです(p67)。我々が食している食物の大元である種が毒物であるという事実はとてもショックでした。

以下は気になったポイントです。

・日本ミツバチの一生は2~4か月ほどだが、その間に幼虫の世話係、巣の掃除係、門番等を経て、最後に蜜を集める仕事の外勤蜂となる、春には分峰言われる巣分かれをして勢力を拡大する(p11)

・ミツバチの巣(群)が滅びるのは、女王バチの老齢により一群ずつ滅びるのが普通である、果樹園やビニルハウス等で受粉用のハチが減少していると農家間で言われている(p15)

・農薬汚染がひどいのは本土側よりも島である、周りとの付き合いや、しがらみもあり、老齢化で他人任せ、農協任せの農業のため、ミツバチだけでなく多くの昆虫や鳥類が消滅している(p22)

・日本ミツバチが西洋ミツバチと比較して、1群が集蜜する面積が4分の1なので、集蜜量が4分の1となる、4倍の密度で飼えば生産量は同じになる、これは全国的に理解されていない(p29)

・粒剤の農薬はゆっくり溶け、その水溶液を稲が根から吸収し、茎や葉、花、米に持っていく、カメムシは茎や葉、米をかじって死ぬ。コメの内部にも当然農薬は浸透している(p54)

・米、トウモロコシ、豆類の種子は多くが農薬が染み込んでいる、これらの種子の袋には「食べられません」と書かれている(p67)

・土壌汚染を防ぐために農薬を地面に塗布しないで作物だけに行く方法は、少量の農薬を芯に近い部分に塗布する、するとキャベツは出荷するまで全く虫に食われずに、見かけの良い高値で売れるキャベツになる(p68)

・2009年に虫を殺しすぎて 2010年にはもはや殺すべき虫がいなくなり、農薬が売れなくなってしまった。強力な農薬を一旦撒布すると、農薬メーカを苦しめることになる(p70)

・2009年には神奈川県三浦半島でミツバチがほぼ全滅、長崎県では被害総数は 1900群になった。ネオニコチノイド系農薬により、ミツバチは帰巣本能をおかしくされた(p101)

・40年近く使用され続けてきた、有機りん系の農薬は2007年にEUでは毒性が強い農薬として禁止された、日本では禁止されていないが、新しい農薬としてネオニコチノイド系農薬が現れた(p104)

・ネオニコチノイド系農薬の特徴は、浸透性にある、農薬が根から吸収されると、作物の葉・茎・花などのあらゆる部位に毒が染みわたる(p108)

2013年6月9日作成。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 環境・エネルギー・気候・学術
感想投稿日 : 2013年6月9日
読了日 : 2013年6月8日
本棚登録日 : 2013年6月9日

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