金融危機で失った資産を取り戻す方法

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  • フォレスト出版 (2009年10月22日発売)
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感想 : 20
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昨年(2008年)9月のリーマンショック以来、GMやクライスラーが倒産するなど世界経済は大きな変化を見せているのは誰の眼にも明らかになってきました。今年8月末の総選挙においても本当に民主党が政権を奪取してしまい、日本経済に与える影響も大きくなり、今後数年で大きな変化が起きると予想されています。

この本の著者である中原氏によれば、今年12月に開催予定のCOP15を境に、環境をテーマにしたバブルが起きはじめる(p14)とのことです。情報をつかんでいる人は、今頃には仕込みは完成しているのでしょうか。

この本の後半には今後有望とされる株式一覧がありますので、このレビューに記録しておき、定期的にチェックしてみたいと思います。資金に余裕があれば実際に購入してみたいところですが。

個人的には、長い期間でみれば自然変動のように増減してきたCO2をなぜ減らす努力をする必要があるのか解せないところはありますが、世界不況対策(及び富裕層が失われた資産を取り戻す方法)としては意味があるかもしれないので、今後、株式の変化をウオッチするのも良いかなと思いました。驚いたのはCO2を具体的に精度良く測定する方法がない(p119)という事実でした。

以下は気になったポイントです。

・アメリカにおける包括エネルギー政策法の骨子は、1)アメリカ国内を省エネルギー化、2)代替エネルギーのバイオ燃料の普及(2012年度までに2005年度の3倍の75億ガロン)、3)原子力発電所の新規建設推進、であり、アメリカの石油資本戦略が大きく転換したことを意味する(p27)

・外国人投資家が本格的に動き出し、日本株が上昇するのは、アメリカの「雇用統計」と「中古住宅販売件数(中古市場は全体の7割)」に底入れが確認された時(p43)
・2009年12月のCOP15では、「2013年から始まる次の第二期約束期間にどのようなアクションをとるか」について新しいルールが採択される(p109)
・排出削減を推進するため導入するマーケットメカニズムとは、1)CDM(クリーン開発メカニズム:技術資金と排出量を交換)、2)排出量取引、3)共同実施(先進国同士間)、4)吸収源活動(植林を削減分とする)、である(p113)

・二酸化炭素という目に見えない「空気の取引」を土台にしているので、客観的にその公正さを補償することが非常に難しい(p114)
・温室効果ガスの排出量を高い精度で具体的に測定する方法は実はない、実際には計算式を用いて使用エネルギー毎に係数をかけて温暖化ガスの排出量を求める(p119)

・脱石油のための投資のポイントは、原子力発電・スマートグリッド・電気自動車、つまり「原子力発電で生まれた電気を、スマートグリッドで効率的に供給し、電気自動車を走らせる」である(p125、199)

・二酸化炭素による地球温暖化は、科学的には因果関係は証明されていない、IPCCも報告書の中では原因が見つかったと書いていない、温暖化の原因として太陽活動にあるという東工大の丸山教授説を支持する人も多い(p137)

・脱石油による日本への危機として、1)各国の産業構造の変容により日本工業製品の優位性の喪失、2)京都メカニズムが日本企業にとって不利、3)排出権購入が日本企業に重荷となる、である(p150)
・既存カーメーカとしては次世代カーは「水素カー」にしたかったが、オバマ政権の支援をうける新生GMクライスラーは、技術的ハードルが低く本企業と競争力を持てる「電気自動車の開発製造」へ大きく舵をきった(p155)
・電気自動車市場は、ガソリン自動車市場と異なり、コモディティ化(競争商品間の差別化特性が無くなり、価格・量を判断基準として購買行動が起きる)となる(p157)

・クルマに搭載される電子部品の点数は現在では、クルマ原価の50%に達している中で、問題なのは「車載LAN」通信規格、これはアメリカ(IEEE)ヨーロッパ(ECE)規格によりきめられており、電気自動車が普及すれば日本部品メーカは欧州メーカに特許使用料を払う必要が生じる(p162)
・コマツが中国でハイブリッド建機を発売して販売台数を伸ばしている背景は、日本では作業コストの6割が人件費に対して、中国ではコストの7割がガソリン代、これが削減できれば新規購入の意味がある(p169)

・スマートグリッド関係で有望な企業は、住友電気工業、日本で唯一超伝導技術開発に成功している、制御系では、大崎電気工業(p201)
・原子力発電関係では、部品メーカが有望で、日本製鋼所(原子炉圧力容器)、木村化工機(MOX燃料製造装置)である(p206)
・電気自動車関係では、リチウムイオン電池メーカで、ジーエス・ユアサ(中国BYDの唯一のライバル)である(p212)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 資産運用・保全
感想投稿日 : 2012年4月6日
読了日 : 2009年11月8日
本棚登録日 : 2012年4月6日

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