なぜ、脳は神を創ったのか? (Forest2545Shinsyo 15)

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  • フォレスト出版 (2010年6月4日発売)
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脳については昔から興味があり、この本の著者である苫米地氏の本を何冊か読んだことがあります。

この本は、宗教や神がどのようにして作られてきたかについて解説してあり、それだけではなく、米国を支配している人たちがプロテスタントであり、実行部隊はカトリックであるなど、初めて知る内容もあり興味深かったです。

苫米地氏が最初にコメントしているように、神は存在しないものであると証明されたとしても、最善を尽くしたのちの「最後の神頼み」は否定されるものではなく、今後も多くの人がお世話になることでしょう。

また、日本が中国経由で輸入した仏教は、本来のものとは異なり、中国風にアレンジされているという内容は興味が惹かれました。

以下は気になったポイントです。

・儲かりもしないのに国民の生命と財産を浪費して戦争をする国はない、やむをえない場合に戦争に訴えても良いというのは、国家が利益のために戦争を行い、そのためには罪もない人々を巻き添えにして良いという理屈である(p24)

・一度、脳に神の情報が入ってしまうと、神が存在する場合と存在しない場合との間に、差はいっさいなくなってしまう(p36)

・人間が信仰心を抱く理由として、1)自分が不完全なシステムであることを、何かをきかっけにして自覚する、2)巫女や祈祷師の能力によって成り立つ信仰心の醸成、3)死の恐怖、である(p48)

・世界の歴史に書かれてきたことは全て勝者の歴史であるように、宗教についても、勝者の宗教のみが記録されている(p62)

・原始キリスト教では、輪廻転生の概念があったが、現在のキリスト教では排除(553年にバチカンがコンスタンティノ公会議において聖典から外すことを決定)されている(p64)

・プロテスタントは、カトリックよりも厳しい戒律を持つ宗派である(p75)

・2009年夏に、原爆を投下したエノラゲイには13人目の人物として、カトリックの神父も乗っていたことを明らかにした、死刑執行の場に神父や牧師が立ち会うのと同様の論理(p86、99)

・貿易商は、バチカンが「現地の人は人間ではない」という正式回答を待って、現地の人間を奴隷という貿易品目に仕訳した、東インド会社の最大取扱品目は、奴隷貿易であった(p92)

・アメリカがドイツに原爆を落とさなかった理由、イラク戦争やアフガニスタン戦争で、原爆に劣らない大量殺りく兵器を使用している(それが許されている)のは、キリスト教徒以外は人間ではないという思想が流れているから(p93)

・アメリカの支配層は、WASP(白人:white、アングロサクソン:Anglo-Saxons、プロテスタント)であり、戦争の最前線に立たなければならない庶民は、たいていはカトリック(p94)

・大量殺戮の汚名は、WASPである国の指導者から、最前線で戦うカトリック兵士に付け替えた、ブッシュがオバマにツケを回したように(p97)

・神の存在を語るうえで、1)物理学における不確定性原理、2)数学における不完全性定理、という画期的な大発見(1980年代)は非常に重大である(p117)

・不確定性原理(ボーアとハイゼンベルク)を示す、「△Lx△v>h、△L:位置の分布、△v:運動の分布、h:プランク定数」は、「2つのものをかけて絶対にゼロにならない=位置と運動を同時に知ることができない」ということ(p119)

・量子力学の不確定性の公式:「△e x △t>h、△e:エネルギー分布、△t:時間の分布」は、1)時間には最小ユニットがある(△eも△tもゼロにならない)、つまり時間は不連続である、2)物質においても、ゼロの状態をつくれない、ということを示す(p124)

・この世の現象は、可能性が高いか低いかの違いはあるものの、すべて確率によって決まるという量子論は、宗教的な運命論を否定する、ハンカチを1センチ上から落としたときは、どこにおちるかかなり正確にわかるが、高いところから落とせばランダム性により(0.99x0.99x...=ゼロ)ゼロに近づく(p129)

・宗教では、人間の死は136億年前に決めましたというのが「宗教でいう神の思し召し」であるが、量子論では、この世の現象はすべては確率なので、量子論上では「神は死んでいる」ということになる(p130)

・チャイティンの不完全性定理は、例えとして、コンピュータプログラムでソフトをつくって「このプログラムにはバグはない」と証明できても、それを記述している言語そのものにバグがある可能性もある」というもの(p137)

・1991年に発表された「グリムの定理」は、「神を完全な系と定義すると、ゲーテル=チャイティンの定理により、神は存在しない」というもので、これを覆すことができる哲学者や宗教学者はいない(p138)

・ユダヤ教では、神の名前を口に出してはいけないが、神はキリスト教と同じエホバである(p145)

・釈迦は80歳で死んだが暗殺された可能性が高い、カースト制度を壊そうとしたガンジーが暗殺されたように(p155)

・仏教の出家者は、出家時に全財産を家族においていくか、地元の人に寄付しなければならないという決まりがあった(p159)

・日本に伝わった仏教は、中国がインドから輸入した瞬間に、道教にかわっていること、当時の中国には儒教と道教があり、インドのバラモン教(支配層向け)とヒンズー教(非支配者向け)の関係であった(p164、166)

・釈迦は苦行を徹底的に否定している、悟りを開こうとして餓死す
る寸前まで苦行を行った結果、「苦行がかに無駄なことか」を悟り、それを語っている(p173)

・アメリカ企業では福利厚生費の圧縮が進み生産性が向上しているが、これは従工場牧師の導入によるところが大きい(p187)

・戦費は資本主義では売上になるが、共産主義ではコストにしかならない、だから長い冷戦でアメリカ経済は潤い、それは疲弊した(p204)

2011年9月19日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2011年9月19日
読了日 : 2011年9月19日
本棚登録日 : 2011年9月19日

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