地図に載っていない隠れ里「穏」で暮らす賢也が、命を狙われたことをきっかけに「穏」から逃げることで物語が広がっていく。
おもしろい!
賢也が「穏」から出ていくことで話は広がっていくけれど、そんなに展開しすぎずにまとまっていて、閉鎖的な雰囲気が良い。広がっていくのにどこか閉鎖的なのが不思議。恒川光太郎作品って感じ!この世界観本当好きだなぁ
「穏」と、いわゆる「こちらの世界」の交差に加えて、登場人物も交差していく。
登場人物はみんなキャラが立っていて読んでいて楽しかった。
特に好きなのはツガ。ちょっとしか出てこないけれど・・・
やさしくて穏やかで可愛らしい!(おじさんなのに笑)
「穏」から旅立つ茜をツガが送ってくれる場面、のんびりしていて、透明感が良いなと思う。
「油揚げが載っているラーメンもあるよね?」
「茜ちゃん死んだら俺、泣くよ」
「穏」と墓町の境で幽霊を追い返している大渡さんも好きだな。渋くて良い。
この「穏」と墓町の境界で幽霊がこちらに歩いてくる場面の、おどろおどろしい不気味な描写、やっぱりすごく上手。得体のしれない感じがすごくゾワッとして静かに怖い。
物語のラストもとても静かで寂しい。
え、そうなるの?と思うけれど、物語は淡々と進んでいく。そもそも物語全体が静かで、クライマックスの戦いの場面もやっぱり静か。スローモーションで見ているかのような、ゆっくりとした感じ。この静かさが独特な味で良いですね。
「きっと人はみな死にかけていて、生とは要するに、死にかけているものが、死なないように足掻くその行動の全てを指すのだ」
- 感想投稿日 : 2023年8月19日
- 読了日 : 2023年8月13日
- 本棚登録日 : 2023年8月13日
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