憲法とは何か (岩波新書 新赤版 1002)

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  • 岩波書店 (2006年4月20日発売)
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・近代立憲主義
立憲主義は国家の権力を制限しようとする古くからある考え方。近代立憲主義は多元的な近代を制御するために生まれた考え方で、公私を区別し、国家は私的な領域に踏み込まず、私的信条は公共に持ち込まれない体制。これは人間の自然的欲求に反する。人は自らの信じることが社会全体に行き渡って欲しいと思うものであり、また唯一の明確な正義に従っていたいと思うものだから。近代人は異なる価値観の選択に常に悩む宿命にある。近代立憲主義の前提として、異なる価値観の比較不可能性がある。価値観の比較不可能性を認める論者は、マキャヴェリ、バーリン、ロールズら。認めないのは、レオ・シュトラウス、カール・シュミット、マルクス。

・憲法改正を論じるに当たっては、その改正によって日本が国家の基盤としての思想的にどの陣営に属することになるのか、そしてそれが他国との関係にどういう影響を与えるかを熟慮すべきである。

・立憲主義的憲法は、多元主義を前提とするので、唯一の正しい生き方を国民に強制するものとはなり得ない。即ち、憲法の条文は、強制的なルールではなく誘導的なプリンシプルである。9条を文字通り読んで自衛隊の存在を全く認めないのは、憲法をルールと捉えるものであり誤りである。21条も文字通り読めば表現の制限を全く認めないように見えるが、わいせつ表現の制限は認められるではないか。

・共和制
世襲による君主制に対し,主権が複数者にある政治形態。国家元首や人民の代表者を間接・直接に選出し,主権が人民にある民主的共和制と,少数特権階級にのみ主権がある貴族的共和制・寡頭的共和制などがある。古代ギリシャでは、民主制はネガティブな言葉だったが、共和制はポジティブな言葉だった。

・プレコミットメント
憲法によって国家の権力を制限するのは権力者自身が望むことである。なぜなら権力の一部を自発的に他者に委ねた方が、自分のミスを防いだり、権力の信頼を高めたりするなど、権力の長期維持に資するからである。即ち、無制限の権力よりは制限された権力の方が強い権力である。という考え方。

・大統領制
行政の長である大統領と立法府である議会の議員の両方を選挙で選ぶ。

・議員内閣制
議会の議員のみを選挙で選び、行政の長は議会が選ぶ。

・二元的民主主義
利害調整の通常政治と、身近な利害を超えて国の基本的あり方を議論する憲法政治。憲法政治は必ずしも憲法典の改正のことではない。

・国境を決める明確な原理は存在しない。故に、現状の国境から後退した場合、踏みとどまるべきラインも決定できないので、国家は現状の国境の維持にこだわらざるを得ない。

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感想投稿日 : 2017年5月20日
読了日 : 2011年7月3日
本棚登録日 : 2017年5月20日

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