活版印刷三日月堂をひとりで営む弓子と、活版印刷に魅せられた人々の物語を、ゆるやかなチェーンステッチのように綴る、連作短編集その3。
硬い蕾のようだった弓子が、少しずつ表情も言葉も意欲も豊かになってきた。
今回は、タウン誌の取材を受けた事をきっかけに、早逝した母カナコの残した短歌を作品に仕上げる依頼を受けた弓子は、活字になった母の短歌に、「生きててよかった」と笑顔を見せる。
そして、母の句を印刷したカードを目にした女子高生との出会いで、人と作業する喜びを見出し、依頼を受けて制作する受け身の姿勢からさらに前進し、自ら企画した作品を制作・販売することに挑戦する。
そして、さびしさを常にまとってきた、天涯孤独な弓子のパートナーになる予感を感じさせる男性・悠生との出会い。
少なくとも、彼は、祖父の大型印刷機を甦らせ、本を作りたいという気持を持ち始めた弓子の、大きな支えになることは間違いない。
でも、これまでも弓子自身にひそかに惹かれているらしき男性たちが何人も…
まさか次巻はそんな男性陣たちが火花を散らす?
物語が進むにつれて、弓子がだんだんくっきりとした輪郭を持って生きる女性となってきて、ますます次巻が楽しみ!
どんな物語が待っているかはわからないけれど、弓子が早く「ひとりぼっち」でなくなりますように。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
国内作家
- 感想投稿日 : 2018年5月17日
- 読了日 : 2018年5月17日
- 本棚登録日 : 2018年1月23日
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