ちくま日本文学001 内田百閒 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2007年11月20日発売)
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本棚登録 : 653
感想 : 66

怖いと評判の「山高帽子」「サラサーテの盤」がどちらも収録されていたため購入。冒頭から不条理短編の連続で、試されている感が強い。
「東京日記」はより奇想に特化しつつコンパクトになっていて好き。
後半の子供の頃の話(琥珀、遠洋漁業)は、子供の期待があっさり裏切られる様を淡々と描いていておもしろい。
「コレラ」は今の時代だったら絶対炎上する内容だな。
「からだじゅうにさむさむがたった(豹)」とか「むうむうして口も利かない(流渦)」とか、唐突にかわいい表現が出てくる。
「山高帽子」「サラサーテの盤」は、外の風や雨の音で不安感を煽る手法が好き。
「阿房列車」は主人公のマイペースさと自分勝手さが極まっていてすがすがしい。目的もなく列車に乗るためだけに借金とか、事前に予定が決まるのが嫌で当日切符を買おうとしたら売り切れとか。あえて変なキャラとして描いているのか作者自身が変なのか、当時はおおらかだったのか…全部あるとは思うけどその配分が気になる。「山高帽子」でも、軍の語学学校とかお堅そうな職場なのに、数か月失踪してたとかあっさり書いているし。作中の主人公がなにかとやらかしているのを淡々と変な言い訳をしたり人のせいにしたりしているのが、作者のムスッとした顔と雰囲気がマッチしていて面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月13日
読了日 : 2021年2月13日
本棚登録日 : 2021年2月11日

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