めちゃめちゃにおもしろい こういう論考を読んでみたかったのよ
系外惑星や宇宙生命に関する科学的な観点での現状の理解を解説する記事と、純粋に宇宙倫理学にまつわる思想的な記事とが集められています。前者は飛ばし飛ばししつつ、後者を重点的に読みました。おもしろいのは磯部洋明さんと呉羽真さんの記事。特に大きかった気付きは、天文学・宇宙科学の地球的な視点は個々の人間存在を粗視化することにつながるというハンナ・アーレントの批判。今まではそれは地球という一つの惑星に住まうわれわれ、という意識をうみ地球規模の問題を解決する視点を提供できるものなんだという意識しかなかったけど、確かに視点が広がることは同時に多様性の軽視につながりうる。グローバリズムと構造的には同じだ。しかし良い面があるのも事実だし、それが天文学の効能だと思ってるところはあるし、良い落とし所をみつけたい。
しかし人類が宇宙に出ることがこれほどAIやらエンハンスメント(人間自体の性能を工学的にいじくって宇宙での適応力をつけること)の問題とかかわってくるとは。でもこれからどうするかというのは完全に自分たちのてのひらの中にあることだから、無関心であることは罪だと思う。シンギュラリティを恐れているだけの人は、選択権が自分たちにあることを自覚すべきだし、それこそ歴史に学べよと思う。必ずしも科学がもたらすのは平穏だけではないということは、唯一の被爆国だからこそ切実であるはずでしょう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2017年7月24日
- 読了日 : 2017年7月23日
- 本棚登録日 : 2017年7月18日
みんなの感想をみる