ビジュアル 明治クロニクル

  • 世界文化社 (2012年12月11日発売)
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本棚登録 : 28
感想 : 5

「ちょっと頑張れば行けそうな国。それが明治だ。」

維新の夜明けとともによちよちながら近代国家への一歩を踏み出した明治日本。その足跡を出来事と人物の二つの面から、貴重な写真や絵により明らかにする。

日本の歴史を振り返る時、幕末から維新つまり江戸から明治の境目には、年が明けて正月を迎えたようなお祭り気分が少なからずある。本書の概説にも明治時代の日本を貫く特徴として「底抜けの明るさと非常にはっきりとした国家像」とあった。

政治・社会・文化などあらゆる面において、国が封建時代の長いトンネルから引っ張り出され、いきなりスピードアップして進み始めたような気持。本書の、ふんだんに使われた版の大きな写真、鮮やかな錦絵などの挿入は、読者のそういう気分を大いに駆り立てる編集になっていると思われる。

それにしても、このビジュアル書はB5の大きさの一ページ全てを一人の写真に使うなど、人物写真のインパクトが強い。もちろん白黒写真ではあるのだがどれもみな鮮明。美人で名高い鹿鳴館の華、陸奥宗光の夫人・亮子さん、「今月の婦人画報の表紙です」と言いたくなる美しく洒落たアングル。日本最初の女子留学生・少女の津田梅子ちゃん、スタジオアリスで撮ってきましたか~?満面笑顔の女優・川上貞奴はさながらスポーツ新聞の芸能面…

明治を代表する軍人とても、バルチック艦隊を破った東郷平八郎、203高地の奮戦が名高い乃木希典も、歴史に名を残す彼らがまるで「先日、出仕の帰りに撮りました」なんて言いそうな写真で見られる。

明治に生きた彼らが、今もどこかに生きていそうな顔をしている。会えそうな気がするのに、会えない。この感覚はなんだか遠い外国に住んでいる人に対する気持ちに似ている。「時代」というよりはもはや「国」。膨大な資料があって、写真もそこそこ残っていて、ちょっと頑張れば行けそうな国。(何をどう頑張るのかわからんが…)それが明治だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年2月11日
読了日 : 2013年2月11日
本棚登録日 : 2013年2月11日

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