序盤のテンポ感がよい。検査中のレジのような音、堤真一がOJOのベルを何度も鳴らすときのリズムなどが印象的。
終盤の、大阪の喧騒がひとつの目印を機に静まりかえるコントラストが目玉。
大胆かつ壮大なフィクションなので転入転居が多いこの現代にありながら大阪が一枚岩になる不自然さも気にせず観るのがよい。
しかし終盤は間延びが気になる。補助金の規模と使途の話に対して大阪の男の家族観で返すなんて、論点がかみ合っていない。ふんわりお気持ちでまとめる日本TVドラマのお家芸だ。そして会談の終わり方は突飛すぎるしある意味ありきたりで芸がないと思った。説得で退いたはずなのに暴力で幕を引くとは何がしたいのか。
カットや画面上の配置にこだわりや隠喩が少ないように思われ、また聞いててわかりやすいがやや説明的すぎるセリフなどにTVドラマくささも若干感じる。唯一印象に残った堤真一の視界を遮るシーンはなんだったのか。人の出入りの話だけならそのくらいでは遮り切れていないし。
原作から旭と鳥居の性別をスイッチさせたのが少し気にかかる。どうしてもゆずれないキャスティングの構想があったのか。邪推かもしれないがおとぼけキャラを女性にしたがるジェンダー観を感じてしまう。綾瀬はるかの演技が少し苦手なので余計に目についたのかもしれない。
また、トランスジェンダーの子に対して半ば認めつつ男であることの責任を負わせる親の態度がどうも中途半端だ。
いやそもそもこの話は男系で進む。元が戦国時代由来とはいえ、どこまでも男の書いた男のためのロマンのお話でしかなく、それを活発な女性キャラクターとトランスジェンダーで現代っぽく偽装した、そんな印象がある。
- 感想投稿日 : 2020年8月17日
- 本棚登録日 : 2011年9月27日
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