NHK「100分de名著」ブックス 松尾芭蕉 おくのほそ道

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  • NHK出版 (2014年10月23日発売)
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長谷川櫂
NHK 100分de名著
松尾芭蕉 「 おくのほそ道 」

さすが100分de名著。俳句解説や名所紹介でなく、芭蕉の世界をわかりやすく説明し、「おくのほそ道」を読んでみたいと思わせる


おくのほそ道を紀行文というより、芭蕉が「かるみ」という境地に達するまでの精神史と捉え、俳句から 精神変化を読みとる構成


芭蕉の精神史のスタートを 「月日は百代の過客にして」ではなく、「古池や 蛙飛びこむ水のおと」としている。古池の句で開眼した心の世界を みちのくの歌枕の旅、無常観、宇宙観、現世の別れを経て「かるみ」に達したとするアプローチ


かるみ=苦難に微笑を持って乗り越える生き方
*不易流行の上に立つ生き方。出会いや別れに一喜一憂することなく 軽々と生きていきたいとする芭蕉の願い
*不易流行=宇宙はたえず変化しながらも不変であるという宇宙観、自然観、人生観


おくのほそ道の4部構成
1.江戸〜白河
*旅のみそぎ(みちのくの旅の前に旅の無事を願う)
*芭蕉は 古池の句で開いた 心の世界を求めて 歌枕の宝庫 みちのくを旅する

古池や 蛙飛びこむ水のおと=芭蕉開眼の句〜心の句を詠んだ
*蛙が水に飛びこむ音→芭蕉の心に古池を呼び起こした
*俳句=現実+心の句→異次元の同居が躍動感を与えた

2.白河〜尿前
*みちのく歌枕の旅
*歌枕の廃墟に 時の無常を感じ、人は どう生きるべきかを考える

白河〜尿前→みちのく歌枕の旅
*みちのくの歌枕を訪ねることが目的→白川の関、松島の松
*みちのくは歌枕の宝庫
*時移り、代変じて、其跡たしかならぬ→ 歌枕の廃墟に失望と幻滅

松島に芭蕉の句がない
*松島はおくのほそ道の山場
*風雲の中に旅寝するこそ、あやしきまで妙なる心地=空中に旅寝しているような夢心地
*予は口をとぢて=感激のあまり眠れず
*自分の句を外して 松島の情景を想像力の中で広げた

平泉はおくのほそ道の みちのくの旅のまとめ
*時は何もかも押し流してしまう無常迅速の嘆き
*兵どもが夢の跡→夏草を目にした芭蕉の心の世界

中尊寺の光堂
*光堂は空虚の草むらになっているはずなのに ならなかった→無常迅速な時間に流される運命に耐え残っている
*生きながらえるものの微かな光明

3.尿前〜市振
*宇宙の旅
*旅の中で 宇宙と出会い、無常迅速に見える宇宙が永遠不変であることに気付く=心の世界が 不易流行に発展する
*日月行道の雲関に入る=天の入口
*雲の峰〜壮大なスケールで宇宙を描き、その転変に心動く

4.市振〜大垣
*人間界の旅
*塚も動け=芭蕉の心の世界〜一笑の若すぎる死を惜しんだ
*別れの嘆きに満ちた人間界にもどり「かるみ」という境地を得て 別れを乗り越える


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年7月13日
読了日 : 2021年7月13日
本棚登録日 : 2021年7月13日

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