最後の親鸞 (ちくま学芸文庫 ヨ 1-6)

著者 :
  • 筑摩書房 (2002年9月10日発売)
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感想 : 35
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吉本隆明 「 最後の 親鸞 」 親鸞の思想的到達点を論じた本。著者は、親鸞を 宗教を解体した思想家と捉えているのだと思う

凄い本だと思うが、信心や宗派を解体した後の親鸞像は過激〜親鸞が廃人みたいに描かれている

親鸞が到達した思想は「面々の御計なり」
*念仏を信じ申すのも、棄てるのも皆さまの心にまかせるしかない
*念仏が救いにつながるかはわからない〜しかし念仏だけが救いの条件であることを 私は信じているだけ


親鸞の到達した思想から紐解くと、親鸞の考える「救い」「現世」「浄土」「還相」が明らかになり、悪人正機説の意味が理解できる


著者の親鸞像の中で不明なのは「教行信証」を書いた理由〜読み落としただろうか? 親鸞が宗派信仰を放棄したのなら、野間宏 氏が旧仏教と戦うために書いたとした「教行信証」は 何の意味も持たないように思う。捨てる教理について 書くだろうか


最後の親鸞における「救い」
*絶対他力〜絶対他力にゆくには、知と愚が本願の前で平等でなければならない
*非知に近づいてゆく還相の知
*聖者の救いではなく、浄土で仏となって現世へ還り救う

親鸞が法然を飛び越えた部分
*因果論の否定〜念仏を唱えることが善と考えない。善を積むから成仏できると考えない
*現世肯定〜悪に満ちた この世そのものが救いにつながらなければならない
*浄土へ往くことが救い(現世離脱の契機)を否定
*理(法然の専修念仏による他力説)によって 信(専修念仏の信)を支えることはできない

親鸞が考える「現世」
*契機(業縁)を中心に展開される不可避の世界
*現世と浄土を結ぶ契機は、構造であり、因果関係ではない

還相
*還相の視点〜煩悩や悪をまるごと救いとり、浄土への契機として読み替える
*還相とは、悪に満ちたこの世の内部に浄土という救いに向かうための思想的虚構





悪人=自力に頼ることのできない人間








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感想投稿日 : 2021年10月31日
読了日 : 2021年10月31日
本棚登録日 : 2021年10月27日

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